2024 年 23 巻 p. 133-140
薬剤の末梢静脈内投与に伴う血管傷害として静脈炎を生じることがある. しかし, 静脈炎に対する介入を行うための根拠となる血管傷害に関する病態の詳細は明らかとなっていない. そこで本研究では化学的静脈炎を引き起こしやすいフェニトインナトリウム注射液による24時間時点での血管および周囲組織への影響を明らかにするため, ラット全9匹を対象とした実験的な基礎研究を行った. 結果として, 肉眼的な炎症所見は観察されなかったが, 組織学的観察では血管内皮の傷害や血栓形成, 炎症性細胞の浸潤といった炎症所見が確認された. また特徴的な所見として, 炎症性細胞の浸潤は血管壁に限局して生じているものではなく, すべての個体で血管の周囲組織にも顕著に生じていた. 以上より静脈炎とは, 血管壁への直接的な侵襲に伴う炎症だけでなく, 血管周囲組織にも炎症が及んでいることが明らかとなり, 要因として薬剤が血管外に漏出している可能性が示唆された.