2024 年 23 巻 p. 141-149
本研究の目的は, 高齢者介護施設入居者の手指衛生の実態を把握することである. 入居者をケアする職員240名を対象に入居者の手指衛生の実施頻度を調査した. 入居者は活動状況別に3群に分類し, 手指衛生の方法と実施場面の違いによる手指衛生の実施頻度を調査し, 3群間で比較した. 入居者の活動状況によって介護現場で実施されている手指衛生の方法は異なり, 寝たきりのベッド上群がウェットティッシュ, 排泄をポータブルトイレで行うポータブルトイレ群はアルコール, ひとりで移動できる見守り群は流水であった. 手指衛生の場面は, ポータブルトイレ群と見守り群の排尿後および排便後の実施頻度が高い傾向にあった. しかし, ベッド上群では排泄後の実施頻度が他の活動群にくらべ有意に低く, 活動状況が低い入居者は, 手指衛生が見逃される傾向にあることが明らかになった.
感染予防の観点から手指衛生は, 高齢者の活動状況に応じてウェットティッシュでの介助, 十分なアルコールを使用する支援と高齢者でも使用しやすい洗浄設備の整備が重要であることが示唆された.