日本看護技術学会誌
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原著
グリセリン浣腸による溶血誘発に関する実験動物を用いた実証的研究
武田 利明
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2006 年 5 巻 1 号 p. 45-50

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抄録
 グリセリン浣腸によって, 溶血や血尿が誘発されることが強く疑われているが, それを実際に裏付ける知見はいまだに得られていない. そこで今回, 直腸内に投与されたグリセリン浣腸液が粘膜面から血管内に移行することを示す実証データを得るために, 実験動物を用いた基礎的研究を実施した. 健常ラットを用いた実験から直腸粘膜に傷害がない場合, グリセリン浣腸液は血管内に移行しないことを示す知見が得られた. 次に, 溶血を誘発しない程度の限局性の直腸傷害ラットを新規に作製し, 同様の実験を行った. その結果, 直腸の粘膜にわずかな損傷がある場合のみ粘膜面からグリセリン浣腸液が血管内に移行し, 溶血や血尿が誘発されることが明らかとなった. 今回の一連の研究により, グリセリン浣腸によって溶血が誘発されることを実際に裏付ける実証データが得られた. したがって, グリセリン浣腸施行前には, あらかじめ痔核等の既往や症状について確認し, 適切に施行するとともに, 実施後は血尿の有無等についても注意深く観察することが重要である.
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© 2006 日本看護技術学会
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