日本看護技術学会誌
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5 巻, 1 号
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原著
  • 武田 利明
    2006 年 5 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2006/05/30
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     グリセリン浣腸によって, 溶血や血尿が誘発されることが強く疑われているが, それを実際に裏付ける知見はいまだに得られていない. そこで今回, 直腸内に投与されたグリセリン浣腸液が粘膜面から血管内に移行することを示す実証データを得るために, 実験動物を用いた基礎的研究を実施した. 健常ラットを用いた実験から直腸粘膜に傷害がない場合, グリセリン浣腸液は血管内に移行しないことを示す知見が得られた. 次に, 溶血を誘発しない程度の限局性の直腸傷害ラットを新規に作製し, 同様の実験を行った. その結果, 直腸の粘膜にわずかな損傷がある場合のみ粘膜面からグリセリン浣腸液が血管内に移行し, 溶血や血尿が誘発されることが明らかとなった. 今回の一連の研究により, グリセリン浣腸によって溶血が誘発されることを実際に裏付ける実証データが得られた. したがって, グリセリン浣腸施行前には, あらかじめ痔核等の既往や症状について確認し, 適切に施行するとともに, 実施後は血尿の有無等についても注意深く観察することが重要である.
研究報告
  • ─水平仰臥位と上半身20°挙上位の比較─
    中川 真帆, 滝内 隆子, 花岡 美智子, 金若 美幸
    2006 年 5 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2006/05/30
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     洗髪車を用いた洗髪は, 一般的に水平仰臥位で実施されている. しかし, 上半身を挙上した体位を安楽とする患者にとって水平仰臥位での洗髪は, 生体負担や不快感が大きいと思われる. そこで, 本研究は, 水平仰臥位 (以下0°) と上半身20°挙上位 (以下20°) における洗髪車を用いた洗髪に伴う生体負担について明らかにすることを目的とした. 対象は, 肩凝りのない女子学生10名であった. 0°と20°における, 血圧, 脈拍, 表面筋電図法の3項目について比較検討を行った. その結果, 収縮期血圧および脈拍数は, 0°と20°に有意な差は認められず, 洗髪中の変動幅も, 0°, 20°ともに小さい変動幅であった. 筋活動電位出現の有無は, 0°と20°において相違のない者の方がやや多い傾向にあった. 以上より, 洗髪車を用いた洗髪においては, 0°だけではなく20°でも実施可能であることが示唆された. このことは, 体位に制限のある患者や, 上半身を挙上した体位を安楽とする患者など, より広い対象に洗髪車を用いた洗髪を提供できることにつながるものと考える.
  • ─アクチグラムとOSA睡眠調査票 (MA版) による評価─
    田渕 祥恵, 小板橋 喜久代
    2006 年 5 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 2006/05/30
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     目的 : 本研究は外科的治療過程にある急性期の患者の睡眠パターンを明らかにすることである.
     研究方法 : 消化器系疾患により開腹手術を受ける入院患者12名 (手術群), 消化器系疾患により内科的治療を受ける入院患者13名 (対照群) に, 客観的指標としてアクチグラムで活動量の測定と主観的指標として OSA睡眠調査票 (MA版) の記入を入院当日から連日7~10日間測定し, 睡眠評価を行った.
     結果 : 手術群の術前における夜間睡眠率は, 対照群と同様に一定の睡眠率を維持していたが, 手術後の夜間睡眠率は低下する傾向がみられた. 手術群の術後1~2日における睡眠覚醒リズムは乱れていた. また, 術前および対照群に比べて, 手術後1~2日の昼寝の回数が増加していた (p<0.001). 両群の活動量からみた夜間睡眠率と OSA睡眠調査票 (MA版) による睡眠評価にはほとんど相関はなかった.
     結論 : 手術患者は, 手術後の急性期には一時的に睡眠覚醒リズムが乱れることが示唆された. 客観的睡眠評価と主観的睡眠評価は一致しないことが示唆された.
文献レビュー
  • ─適用分野と主な効果を中心に─
    近藤 由香, 小板橋 喜久代
    2006 年 5 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2006/05/30
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、1997~2004年に行われた自己コントロール法のリラクセーションの文献レビューよりリラクセーションの研究の動向や適用分野と主な効果について明らかにすること、また今後のリラクセーション研究の課題について検討することであった。32の文献を分析した結果、リラクセーションは主に健康者に適用され、臨床ではがん患者 (痛み、倦怠感、吐き気) や手術患者に適用されていた。使用されたリラクセーション技法は主に 「漸進的筋弛緩法」 「呼吸法」 「誘導イメージ法」 などがあげられ、リラクセーションによってほとんどの研究で 「症状の改善」 「リラックス感」 などの効果が示唆されていた。リラクセーション研究の課題としては、臨床での活用を拡大していくこと、短期的効果だけでなく長期的効果を検証していくこと、研究の手順 ・ 方法の明確な記述を実施していくこと、看護実践者と看護教育者との共同研究および臨床研究を推進していくことなどがあげられた。
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