日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
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原著
触れるケアをめぐる看護師の経験
─身体論的観点からの分析─
川原 由佳里守田 美奈子田中 孝美奥田 清子本江 朝美田中 晶子五味 己寿枝
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2009 年 8 巻 2 号 p. 46-55

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抄録

 本研究の目的は, ①触れるケアをめぐる看護師の経験, ②臨床のなかでの触れるケアの位置づけ, そしてアロマセラピストの語りとの比較を通じて③看護における触れるケアの特徴を明らかにすることである. 看護師 13 名とアロマセラピスト 4 名に面接を行い, 参加者の語りを身体論的な観点から分析した. 結果, 看護師は生活援助やコミュニケーション等のさまざまな場面で, 直観的に相手のニーズを把握し, 即応的に触れるケアを行っていた. 触れている最中, 看護師は自らの手に感じられる相手の状態に集中し, 相手の心身の変化を感じとっていた. 看護師たちは触れるケアの効果を確信をもって語り, そうしたケアに看護職としての喜びを見出していたが, 治療中心, 効率性優先の臨床では, 触れるケアは特別な価値をもつものとは認識されず, その体験を誰かと共有することも少なかった. 看護師自身にも触れるケアの価値そのものが認めづらい現状が明らかになった.

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© 2009 日本看護技術学会
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