抄録
車いすによる移送は居宅および医療 ・ 保健福祉施設においても頻度の高い介助操作であるが, その操作指標は明確とされていない. そこで本研究では, すべての推進操作の基本となる発進と停止の望ましい操作指標を得ることを目的とし, 乗車側の乗り心地と介助側の介助負担の両面から操作の特性を検討した. 被験者は介助者と乗車者を設け, 介助者は看護師と介助未経験者の 2 群に設定した. 介助者には発進と停止を 3 ~ 4 通りの速度条件に従い任意の速度で操作させ, 車いすの走行軌跡の測定および乗車者と介助者双方に主観評価を行った. その結果, 発進 ・ 停止とも一定の地点において境界の速度を超えると乗り心地は低下した. また, 介助負担感と乗り心地との間には負の相関関係が認められた. 加速減速が大きいと乗り心地が低下するが, 乗車者の乗り心地を高めることが介助負担の増加にはつながりにくいことが示唆された. また, 減速開始地点から停止までの距離と乗り心地の間にも負の相関関係が認められ, 距離を用いた操作指標が有効ではないかと推察する.