2022 年 27 巻 1 号 p. 99-
【要旨】麻疹(はしか)の原因である麻疹ウイルスは、パラミクソウイルス科に属する RNA ウイルスで、免疫系細胞に感染し一過性の免疫抑制を起こす。2016 年を底に世界的な流行拡大が続いており、2019 年には年間 20 万人以上の死者が出ている。また、麻疹ウイルスは低頻度ながらきわめて予後不良の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)や麻疹封入体脳炎(MIBE)などの中枢神経系感染を起こす場合がある。したがって、現在の世界的な流行後には麻疹ウイルス関連脳炎患者の増加が懸念される。本稿では、麻疹ウイルスによる神経感染機構および感染阻害機構について、近年の研究成果を中心に概説する。