抄録
症例は70歳男性。自宅で倒れていたところを救急搬送され、来院時意識E1V1M5、顔面を含む四肢麻痺と感覚障害、右半身に多発する褥瘡を認めた。頭部MRIで広範な出血性梗塞を認め、心電図では心房細動があり、心原性脳塞栓症と診断した。
入院時より炎症反応高値であり、入院時の血液培養で Granulicatella adiacens (G.adiacens) が同定された。同菌は口腔内や消化管粘膜に常在し、おもに感染性心内膜炎(IE)の起因菌として知られる。本症例では上唇粘膜の潰瘍、または直腸と連続する痔瘻と左肛門周囲膿瘍を感染源としてIEを発症し、多発出血性梗塞をきたしたと考えた。非弁膜症性心房細動を有する多発出血性梗塞の症例で、入院時に炎症反応上昇を認める場合は、IEを鑑別にあげる必要がある。