NEUROINFECTION
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シンポジウム3「神経感染症としての水痘帯状疱疹ウイルスの疾病負荷」
ウイルス学・潜伏感染と再活性化メカニズム
定岡 知彦
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2025 年 30 巻 1 号 p. 66-71

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抄録

水痘帯状疱疹ウイルスは、ヒトにおいてのみ感染環を成立させるヒトヘルペスウイルスであり、その感染環をすべて模倣できる動物モデルは存在しない。ヒト組織移植重症複合免疫不全マウスのような感染動物モデルでは、移植したヒト皮膚組織への直接的な感染による感染増殖評価、あるいはヒト皮膚移植マウスへの感染ヒトT細胞移入による移植皮膚への血行性ウイルス感染評価がなされ、病原性発揮の感染相である溶解感染メカニズムの解明に寄与してきた。一方、潜伏感染モデルを目指したヒト脊髄後根神経節移植マウスモデルでは、そもそもヒト神経細胞における潜伏感染を定義するウイルス遺伝子発現パターンが不明であり、さらには再活性化も誘導できないことより「潜伏感染」モデルとはいいがたく、潜伏感染・再活性化のメカニズムは不明なままであった。現実社会における、初感染・再活性化ともに予防可能な弱毒生ワクチンと、より効果的に再活性化予防可能なリコンビナントワクチンの存在は、ウイルス感染による疾病負荷を下げながら、接種者間あるいは接種・非接種者間の大規模な疫学的比較を可能とする非常にユニークな機会を提供し、ウイルス再活性化と脳梗塞や認知症といった病態発症との関連性をいままさに明らかにしつつあるが、その発症メカニズムは不明である。本稿では、水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染研究の経過をたどり、ウイルスが潜伏感染するヒト遺体由来三叉神経節サンプルにおける水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染遺伝子の発見と、ヒト多能性幹細胞由来神経細胞による in vitro 潜伏感染モデル確立から明らかとなった、潜伏感染・再活性化のメカニズムを概説する。

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© 2025 日本神経感染症学会
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