2018 年 23 巻 2 号 p. 112-120
当院では脳静脈洞血栓症に対し,複数の静脈洞閉塞と循環時間の遅延を認めた場合,軽症でもヘパリンの持続静注に局所線溶療法を追加している.この治療法の有用性を検討した.脳静脈洞血栓症と診断された連続15例を対象とした.局所線溶療法ではUK 36万単位を上限として投与し,機械的破砕も併用した.部分再開通が得られれば手技を終了した.ヘパリンはAPTTが前値の約1.5倍となるように投与した.年齢は25‒61(平均45.3)歳,男性8例,女性7例であった.原因疾患は経口避妊薬内服中が3例,悪性腫瘍2例,凝固異常2例,感染2例,不明6例であった.症状は頭痛6例,意識障害5例,失語2例,痙攣2例であり,入院時CT,MRIで脳梗塞を1例,脳出血を6例に認めた.罹患静脈洞については上矢状/横・S状/直静脈洞5例,上矢状静脈洞3例,横・S状静脈洞7例であった.治療法については局所線溶療法追加群が6例,ヘパリン治療群が9例であった.局所線溶療法追加群では平均UK使用量は26万単位であり,6例中3例に破砕時にバルーンを使用した.全例に部分再開通が得られ,合併症は認められなかった.治療成績は90 日後のmRSで評価し,mRS 0が8例,mRS 1が4例,mRS 2が1例,mRS 3が1例,mRS 4が1例であった.mRS 0‒2の予後良好例は13例(87%)であり,mRS 3‒4の2例はヘパリン治療群であった.複数の静脈洞閉塞を伴う脳静脈洞血栓症に対しては,軽症でも早期に局所線溶療法をヘパリン治療に追加することは有用である.局所線溶療法では部分再開通が得られれば良く,補助療法と考えて安全な操作にとどめることが重要であり,良好な成績が得られたものと考えられた.