2018 年 23 巻 2 号 p. 107-111
急性期脳梗塞に対する第1選択の治療法であるt‒PA静注療法の対象には発症から4.5時間以内という時間的制約がある,しかしながら,急性期脳梗塞の約25%は,睡眠時や目撃者のいない状況での発症であり,発症時間が特定できない場合は,同療法の対象から除外されてしまう.そこで,DWI‒FLAIR mismatchを用い,発症時間の推定が可能かどうか検討を行った.対象は,2015年1月から2017年8月の発症時間が判明している前方循環系の急性期脳梗塞56症例.DWIで信号変化がありFLAIRで信号変化がないものをnegative,軽度高信号のものをmoderate,高信号のものをpositiveとし,次の検討を行った.1.目視評価によりFLAIRを3分類し,発症からMRI撮像までの時間との関係を定性的に評価した.2.DWIで信号変化がある領域におけるFLAIRの同領域(病変側)と,その対側(正常側)に関心領域(ROI)をおき,(病変側ROI)/(正常側ROI)の信号強度比(SIR)と発症からMRI撮像までの時間との関係を定量的に評価した.1.発症から4.5時間未満の症例におけるFLAIR3分類の割合は,negative 89.1%,moderate 4.3%,positive 6.5%であった.2.SIRは時間経過とともに上昇していき,SIR 1.24以下では発症から4.5時間未満の可能性が高かった.今回の検討より,DWI‒FLAIR mismatchは発症時間を特定できない急性期脳梗塞に対する発症時間の推定に有用であることが示唆された.