2019 年 24 巻 2 号 p. 171-178
近年各種スポーツにおいて,競技中の頭部外傷に対する理解が進み,ルールの改定などが行われている.しかし日本の新体操競技における頭部外傷の実態は,未だ明らかではない.本研究では,我が国における新体操競技者の頭部外傷の現状を明らかにする目的で,新体操競技における脳振盪の実態について調査を行った.2018年に行われたSASAKI CUP第16回全日本新体操ユースチャンピオンシップ・第9回男子新体操団体選手権大会に出場した男女を対象に,過去に経験した脳振盪に関するアンケート調査を行った.478名のうち有効回答は147件(30.8%:男子72名,女子75名)であった.うち93名(63.3%:男子44名,女子49名)にスポーツ傷害の既往を認め,脳振盪の既往は,男子4名(5件),女子1名(1件)であった.新体操競技における脳振盪の発生率は,男子6.9%,女子1.3%であった.5名の脳振盪の受傷回数は,1回のみが4名(男子3名,女子1名),2回が男子1名であった.男子の受傷機転は,宙返りの着地失敗によるものが3名,手具が頭部に落下した例が1名であり,女子は前転で足が滑り頭部をフロアに強打し受傷した.受傷後,全ての選手に何らかの症状が認められた.新体操競技においても脳振盪が発生することが明らかとなった.特に男子新体操では,宙返りによる脳振盪が最も多く認められた.新体操競技においても,他競技と同様に脳振盪後の対応方法や,重大事故予防のための環境づくりが必要であると考えられる.