2020 年 25 巻 2 号 p. 156-159
脳神経外科領域における救急医療の範疇に含まれる疾患は,多くは外傷,脳血管障害であるが,それ以外にも様々なものが含まれる.そのため,初期研修医に脳神経外科救急を学んでもらうことは重要である.「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」でも提言されている通り,卒前,卒後の一貫した医師養成は不可欠であるが,現在の臨床研修プログラムでは内容,時間とも不十分であると言わざるを得ない.また,脳神経外科専攻後の教育においても,high volume centerのように豊富な症例が集まるところであれば問題ないが,そうでない病院ではますます経験できる症例が限られてしまう.さらに今後の日本の人口減少を鑑みると,医師一人の経験症例数はさらに下降すると予想される.これらを打開するためには,医局単位,病院単位で研修を考えるのではなく,地域あるいは多施設共同で若手医師の修練を考えていく必要があると考える.また,限られた症例のなかで効果的に教育を行うためには,効率的な方策が求められる.その方策の一つとして指導医講習があり,そのなかで示される指導方法の一つにコーチングがある.ただコーチングを機能させるためには指導する側の努力だけでなく,指導を受ける側も自身のスキルを向上させる努力が必要である.その両者の努力をいかに引き出すかが,今後の若手教育において重要である.