NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
特異な経過を辿った頚髄内胚葉.腫の1例
植木 泰仁堤 佐斗志野中 宣秀大倉 英浩鈴木 隆元伊藤 昌徳安本 幸正石井 尚登
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2020 年 25 巻 2 号 p. 312-316

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抄録

 症例は43歳男性.1か月間続く右上肢しびれ,後頭部痛を主訴とし当院救急外来受診.既往に特記事項なし.最近の体重減少,腹部症状なし.血清CA 19‒9が195.7 U/ml (0‒37) と上昇を認めたため内科で精査するも原因同定できず.頚椎MRI上C2レベルに多房性の硬膜内髄外腫瘍を認めた.腫瘍とともに脊髄腹側も線状に増強された.腰椎穿刺で少数の異型細胞が検出されるも診断に至らず.後方接近法により腫瘍摘出術施行.腫瘍周囲くも膜は顕著に白濁肥厚していた.腫瘍は全摘出され病理診断は内胚葉囊腫であった.術後交通性水頭症をきたし脳室腹腔短絡術施行.複視,めまい出現のため術後86日に頭部MRI施行したところ広範な髄膜播種所見を認めた.再度全身精査するも原発巣の特定できず.血清CA19‒9は術直後に一旦低下するも再度上昇,最終的に1515 U/mlに達した.術後108日に呼吸不全で死亡.同日剖検施行,胸部・腹部臓器所見は正常であった.一方後頭蓋窩を中心とした顕著な髄膜播種所見を認めた.播種病変の病理診断は腺癌,MIB‒1 index 25%であった.また初回手術時および剖検検体はいずれもCA 19‒9に濃染した.そのため本例では内胚葉囊腫の悪性転化と広範な髄膜播種により血清CA 19‒9が上昇したと推測した.内胚葉囊腫に髄膜増強病変を伴う場合,悪性転化を想定する必要があると思われた.

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© 2020 日本脳神経外科救急学会

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