2020 年 25 巻 2 号 p. 306-311
高齢者の増加とともに骨粗鬆症とそれに伴う脆弱性骨折は増加している.今回歯突起骨折後に環軸椎亜脱臼が進行し,外側椎間関節へのケージ挿入を併用し整復固定を行った高齢者の一例を報告する.87歳女性で,当院受診11カ月前に受傷機転不明の頚部痛が出現し,軸椎歯突起骨折(Anderson分類II型)を認めた.頚部痛を認めたが,脊髄症状は呈していなかった.前医でハローベストによる外固定を勧められたが本人が拒否したため,ソフトネックカラーでの外固定による保存的治療が行われた.当院受診2カ月前より四肢不全麻痺と歩行障害が出現し,徐々に進行した.当院受診時の画像所見では歯突起骨折は癒合せずに偽関節となり,環軸椎関節の不安定性によって頭蓋頚椎移行部で脊髄圧迫を来していた.手術治療は外側環軸椎関節に自家骨を充塡したメッシュケージを挿入することで環軸椎間の整復を行ったのち,環軸椎の螺子固定とMcGraw法による自家腸骨移植を行った.術後良好な経過を辿り独歩で退院した.環軸椎脱臼の整復方法としてはインプラントを用いて環椎を背側に挙上することによる整復が標準的だが,骨粗鬆症患者に対してはスクリューの引き抜け,新たな環軸椎骨折のリスクが懸念される.一方で外側椎間関節間のリフトアップによる整復方法はより愛護的と考える.しかし,横突孔近傍の操作に備えて椎骨動脈の走行を術前に把握し,慎重な手術操作が必要である.