2023 年 28 巻 1 号 p. 15-26
脳梗塞急性期のCEAおよびCASは,脳卒中治療ガイドライン(2021年時点)にても十分な根拠はないとされている.今回,当施設で近年施行した緊急のCEAおよびCASの有効性と安全性について検討した.2018年6月から2020年4月までの期間で発症当日ないし翌日に緊急でCEAまたはCASを施行した連続5例で,うち3例は発症当日の緊急CAS,1例は発症翌日の緊急CEA,1例は発症翌日の緊急CASであった.年齢は,47才から89才(平均77.0才)で,5例とも男性であった.頚部内頚動脈狭窄症について,5例中全例が高度狭窄でうち3例は偽閉塞であった.また5例中3例は既知の狭窄病変の進行であった.CEAの症例の病理では,内膜プラークは内因性の破綻,lipid rich,二次的凝集による血栓形成などの所見を呈し,不安定性および病状進行を示唆するものであり,緊急治療の妥当性を裏打ちするものと考えられた.5例とも血行再建は成功し,いずれも術後8日目~20日目にmRS 0~1で退院となった.進行性脳卒中で脳梗塞が重度になる前または進行性脳卒中が想定される症例に対して施行した緊急CEAまたは緊急CASは,比較的安全で有効な血行再建手段であった.しかし,不安定プラークや術後過灌流,出血性脳梗塞に対しては十分に留意する必要があり,介入の判断は今後も検討が必要な課題ではある.