栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
基礎代謝の季節変化の人種的差異に関する研究
行吉 哉女
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1968 年 20 巻 5 号 p. 422-431

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抄録

従来より日本人については基礎代謝量 (B.M. 値) に季節変動があること, またこの変動はB.M. の気候駅化によることが明らかにせられているが, 欧米の学者間では欧米人については一般にB.M. の季節変動を認めないとする学説が有力である。著者はこのような意見の相違のよってくるゆえんを明らかにせんがために日本に住むカナダ人カトリック修道士と日本人との基礎代謝量を毎月測定比較して次のような結果を得た。
1) 日本人のB.M. 値については先人の成績と同様に夏低く冬に高い季節変動が認められた。一方カナダ人の修道士ではそのような季節変動を認めず年間を通じてほぼ一定のB.M. 値を示した。
かかる日本人と欧米人のB.M. の季節変動の差異は体格, 体質 (内分泌機能), 栄養の摂取状態が関係するものと考えられる。すなわち日本人についても体格の大きい被検者ほどB.M. 値の季節変動の幅が少ない。従ってカナダ人の体格の大きいこともそのB.M. の季節変動の減少に関係するであろう。また欧米人では高脂肪低糖質の食事を摂取しているが, カナダ人の高脂肪食はB.M. の夏期の低下を抑制するに役立っているのであろう。その他生活日課もまたB.M. 値に影響し, カナダ人の夏期の戸外労働は夏期のB.M. 値の低下を抑えるに役立っているとおもわれる。
3) B.M. 値は甲状腺機能によって影響されることは古くより知られているが, 著者の実験ではカナダ人修道士の甲状腺機能は年間を通じてほぼ一定しており, さらに全般的に日本人よりも比較的に高値を保っている。これに反し日本人では夏期に甲状腺機能が低下の傾向を示している。
4) 以上の如くB.M. 値は主として生活環境の気温の変動に伴って代謝機能が気候に馴化する結果として季節変動を示すのであるが, その他に体格, 体質 (内分泌機能), 栄養, 労働状態など種々の因子が作用するために, 欧米人では日本人と異なって本来の気温の変動に伴って現われるべきB.M. の季節変動がこれらの要因の相互作用によってかかるB.M. の季節変動を現わさないようになっていると考えるのが妥当であろう。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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