抄録
人個乳の酸凝固性の相違に影響する要因を検討するため, pH4.6で酸凝固しやすい個乳試料と酸凝固しにくい個乳試料について, 電気泳動パターン, 電気伝導度, プロテアーゼ活性を比較した。ゲル電気泳動パターンから, 酸凝固しにくい人乳のほうがカゼイン含量が少ないと思われた。酸凝固しにくい人乳の場合, 概して電気伝導度およびプロテアーゼ活性が高く, 10%TCA可溶性窒素化合物も多いようであった。また塩添加により人乳は酸凝固しにくくなったが, 乳糖を添加しても酸凝固性は変化しなかった。これらの結果は, 人乳の酸凝固性がおもにそのカゼイン含量, 非たん白態窒素化合物含量または塩イオン濃度等から成るさまざまな要因により相互に影響されることを示している。