抄録
パンの素材の一部を難消化性であるAMSで置換した低カロリーパンを試製し, in vitroでのエネルギー評価を行なうとともに成熟ラットに投与し, 消化管内の動的条件で, 実際にどの程度まで利用されるかを検討し, 同時に生体への影響を調べた。
1) in vitroでのエネルギー評価は, 供試パンをラット小腸抽出酵素で人工消化させ, 生理的燃焼値を有する糖質を定量し, たん白質と脂肪の含量から有効エネルギーを算出した。全小麦粉パンの有効エネルギー (100g当たり274Cal) を100として, 製パン適性が認められたパンのそれを比較すると, AMS 30%添加パンでは85, AMS 50%添加パンでは76を示した。
2) 製パン適性が認められたAMS添加パンを成熟ラットに投与した結果, AMS 50%添加パン群の見かけの消化吸収率は, 全小麦粉パン群に比し, デンプンでは99.4%から94.7%に, たん白質では90.1%から80.2%に, 脂肪では95.3%から94.1%に有意に低下し, 総摂取エネルギーに対する可消化エネルギーの比は, 全小麦粉パンに比し約5%の低下であった。その他, AMS添加パン群では血清コレステロールが低下する傾向を示し, 蓄積脂肪も有意に低下した。しかし, 盲腸は有意に増大し, 消化管に対する多少の負担を与える欠点が見いだされた。