2018 年 35 巻 5 号 p. 637-640
症例は61歳女性,Parkinson病の薬剤性日内変動に対しdirectional leadを用いて視床下核刺激療法を行った.円柱状接触子と同様の単極刺激で日内変動は消失し退院したが,1週間後,呂律不良とバランス不良を訴え再入院した.各接触子の副作用閾値を調べると,前・腹側で構音障害,腹側・後外側で対側半身しびれ感を生じやすく,腹側の接触子で眼瞼の重さを訴えた.Directional current steeringにより構音障害と平衡障害に対し4つの刺激プログラムを用意し,患者自身に選択させると,最初の刺激点より背側に30%,後外側に60%シフトさせた電流配分が最も呂律不良が少なく,しびれ感もなく,バランス不良も軽いプログラムだった.視床下核周囲には,内包,内側毛帯,歯状核赤核視床線維などがあるが,directional current steeringはこれら周辺構造物への影響を最小限に抑え,刺激効果を効率よく引き出せる有用な技術と考えられた.