地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
グローバル化と日本の小麦生産
仁平 尊明
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 3 巻 1 号 p. 57-69

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抄録
 本研究は,グローバル化にともなう作物産地の変容を捉える農業地理学の一端として,とくに小麦に注目して,グローバル化に対抗しうる産地の対応と今後の展望を考察した。小麦は国際的な取引量が最も多く,グローバル化が最も進んでいる農産物である。日本は,1960 年代以降,とくにアメリカ合衆国より大量の小麦を輸入するようになった。2006 年においては,国内生産量の約7 倍(550 万t)の小麦が輸入されている。農産物流通のグローバル化が進むなかで,今後も日本の小麦産地が維持されていくために次の2 点を指摘できる。一つめは,農家レベルでのさらなる生産コストの削減であり,二つめは,消費者と生産者が食料供給作物としての小麦の重要性を再評価することである。これらを達成するための行政の補助として,従来の補助金政策に加えて,遊休農地の活用など,生産のインプット面を拡充する必要がある。
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© 2010 地理空間学会
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