2021 年 38 巻 1 号 p. 48-52
症例は42歳男性.下痢が先行し,四肢末端の痺れ,脱力が出現し,歩行不能となったため入院した.神経学的所見では四肢腱反射は消失,四肢遠位優位の脱力,痛覚過敏,振動覚低下を認めた.末梢神経伝導検査は,運動・感覚神経とも軸索型ニューロパチーを示唆した.Guillain–Barré症候群(GBS)の亜型である急性運動感覚性軸索型ニューロパチーと考え,免疫治療を開始した.免疫治療は腎機能障害,高カリウム血症を伴うため,血液透析を併用し免疫吸着療法を行った.1回目の治療終了後,突然の呼吸困難を呈し,急激なショック状態に陥った.胸部CTで肺血栓塞栓症はなかった.経過中に血清ビタミンB1低値が判明し,脚気の末梢神経障害,心不全と診断した.神経症状,心不全はいずれもビタミンB1投与により軽快した.本症例の呼吸循環障害は体外循環により衝心脚気が誘発されたためと考えられた.本症例のようにGBSの臨床経過を呈する症例では脚気の鑑別を念頭に置く必要がある.