2021 年 38 巻 1 号 p. 53-56
Hybrid Assistive Limb医療用下肢タイプ(HAL®)による歩行運動療法を長期間欠的に施行した筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の3例を報告する.HAL®による歩行運動療法の有害事象は認められず,短期集中的な歩行運動療法の実施により,歩行速度が鋸歯状に改善する傾向を認めた.いっぽう,HAL®による歩行運動療法の実施頻度が低い,あるいは急速な病態の進行を伴う場合には歩行速度の改善を認めなかった.また,経過中に球麻痺の進行を認めた2例に対して胃瘻を造設したが,胃瘻孔・胃瘻ボタンに対する除圧を行うことで胃瘻に関連した有害事象を認めることなく,歩行運動療法を再開することができた.HAL®による短期集中的な歩行運動療法はALSの歩行機能障害に対して有効かつ安全な治療の選択肢になりうる.