2022 年 39 巻 4 号 p. 727-730
症例は65歳男性.高血圧症,糖尿病,脂質異常症の既往があり,腎硬化症による末期腎不全のため維持血液透析導入されていた.血液透析中に突然,構音障害と右上肢麻痺が出現した.頭部単純CT検査では梗塞巣直上の皮質枝内に高吸収の石灰化塞栓子があり,頭部MRIで左中大脳動脈領域の皮質に新規脳梗塞を認めた.各種検査結果は心原性脳塞栓症や奇異性脳塞栓症を疑う所見に乏しかったが,大動脈弁や大動脈弓,内頸動脈基部に石灰化病変を多数認めたことからcalcified cerebral emboli(CCE)と診断した.CCEは初療時に見逃されることが多く,疑わしい症例では頭部単純CTを丁寧に読影する必要がある.動脈壁石灰化の強い透析患者における脳梗塞では,鑑別すべき病型の1つとしてCCEを考慮すべきである.