神経治療学
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臨床研究
抗calcitonin gene–related peptide抗体薬が適応と考えられた片頭痛患者の実臨床での評価方法と転帰
笠井 英世渡辺 慶子安本 太郎水間 啓太二村 明徳黒田 岳志矢野 怜稗田 宗太郎小野 賢二郎村上 秀友
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2024 年 41 巻 1 号 p. 39-48

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抄録

外来通院する片頭痛患者で抗calcitonin gene–related peptide(CGRP)抗体薬が適応であった96例を対象に実臨床における症状の評価方法と転帰を検証した.同薬を投与した71例(galcanezumab 38例,fremanezumab 33例)では3種類の指標(migraine disability assessment scale(MIDAS),headache impact test(HIT–6),visual analog scale(VAS))を用いて,投与開始後1,2,3ヵ月後にその予防効果を検証した.また同薬導入を拒否した25名の片頭痛患者に拒否理由についてアンケートを実施し,抗CGRP抗体薬の導入促進についての課題を考察した.抗CGRP抗体薬の効果については反復性片頭痛患者(epsodic migraine:EM),慢性片頭痛患者(chronic migraine:CM)ともに毎月の片頭痛日数(monthly migraine days:MMD)は有意に減少し,日常生活支障度も有意に改善していることからgalcanezumab,fremanezumabは片頭痛予防薬として有効性が高い薬剤と評価できた.また,最初の1ヵ月におけるいずれかの抗CGRP抗体製剤を投与したCM患者群,galcanezumabを投与したCM患者群の50%レスポンダー率(50%RR)はEM患者群よりも有意に低く,いずれかの抗CGRP抗体製剤を投与したCM患者群,galcanezumabを投与したCM患者は治療早期に反応しにくいことが示唆された.本検討は3種類の評価方法で日常生活支障度評価を行った初めての検討であるが,治療効果を捉える感度は,3ヵ月指標のMIDASより1ヵ月指標となるHIT–6やVASの方が優れていた.一方,抗CGRP抗体薬を拒否した患者では,負担と受診頻度が増える事が拒否の大きな理由であり,費用を抑える事,受診頻度が増えない工夫をする事が,高い予防効果を有する抗CGRP抗体薬の導入促進につながると思われた.

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