2024 年 41 巻 4 号 p. 694-696
症例は69歳男性.2004年,眼瞼下垂と複視を発症し,抗アセチルコリン(acetylcholine:ACh)受容体抗体が陽性で悪性胸腺腫を認めたことから,胸腺腫関連重症筋無力症(thymoma–associated myasthenia gravis:TAMG)と診断し,prednisoloneとtacrolimusの内服を開始した.その後,症状は安定しprednisoloneは漸減中止した.2021年1月,化学療法中に発症した慢性壊死性肺アスペルギルス症の治療中に,血中濃度が不安定となったためtacrolimusを中止したところ,同年4月,筋無力症性クリーゼに急性心筋障害を併発した.Tacrolimusを再開し,免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin therapy:IVIg)およびステロイドパルス療法を行ったところ,クリーゼおよび心筋障害は軽快した.のちに抗横紋筋抗体である抗titin抗体が陽性と判明した.抗横紋筋抗体は,心臓合併症の予測因子として有用である可能性があるため,その測定を考慮する必要がある.