2025 年 42 巻 3 号 p. 436-440
抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体陽性重症筋無力症(anti–muscle–specific tyrosine kinase antibody positive myasthenia gravis:抗MuSK抗体陽性 MG)は,抗アセチルコリン受容体抗体陽性MGに比べて頻度は少ないが治療抵抗性となる割合が高く,病態に基づく治療法の選択が求められる.抗MuSK抗体はIgG4サブクラスで補体を活性化しないため,補体阻害薬は用いない.大量免疫グロブリン静注療法は,抗MuSK抗体陽性MGの病態とは関連が少なく治療には向いていない.現在,ステロイド薬と免疫抑制薬中心の治療が行われ,治療抵抗性に対してはFcRn阻害薬あるいは血漿浄化療法が勧められる.現時点で治療抵抗性の最適治療薬は,rituximabによるB細胞枯渇療法であり国内で使用できることが望まれる.また,これらの治療法に抵抗性を示す場合には,現在開発中で有効性と安全性が担保された新たな治療法の出現が待たれる.最近の抗MuSK抗体陽性MG治療薬の開発状況についても述べる.