日本口腔診断学会雑誌
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臨床報告
性同一性障害の患者に対する顎矯正手術の経験
笠原 清弘永井 佐代子西山 明宏山本 雅絵菅原 圭亮片田 英憲西井 康片倉 朗
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2021 年 34 巻 2 号 p. 171-181

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抄録

Gender identity disorder(GID)とは,「生物学的性別(sex)と,性別に関する自己意識,あるいは自己認知(gender identify)とが一致しない状態」と定義されている。主症状のひとつに,「自らの性別を嫌悪あるいは忌避する」というものがある。すなわちGID患者は,自らのgender identifyに近い身体的特徴の獲得を望むようになる。顎骨を中心とした顔貌形態もそのひとつである。
患者は51歳の独身男性,「下顎前突と顔面非対称の改善」を主訴に,東京歯科大学水道橋病院を受診した。われわれは,患者の咬合と顔貌の審美性の改善のために外科的矯正治療を開始したが,その途上で患者がGIDの加療中であることが判明した。顎矯正手術としては,顔面非対称と下顎前突の改善を目的に,Le Fort Ⅰ型骨切り術と下顎枝矢状分割術が行われた。その後,患者は海外においてsex reassignment surgery(SRS)を受けた。現在,患者は当院への通院を継続中である。今回われわれは,今後増加が見込まれるGID患者に対する顎矯正手術にあたり,治療計画上の配慮について検討を行ったので,報告する。

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