抄録
本稿において、人間の意図認識を行う知的エージェントシステムの構成法を示す。現在、計算機やロボット(エージェント)は人間生活のあらゆる局面で利用されている。しかしながら、人間とそれらのシステムのインタラクションには限られた入出力のチャンネルしか現状では許容されていないのに加え、機能の多様化、肥大化に伴いユーザが覚えなければならないことも増加しており、両者の性能を完全に引き出していないのが現状である。それに比べ人間同士のコミュニケーションにおいては、多様な入出力のチャンネルを複合的に利用し、複雑な意図伝達を簡単に認識し、言語が通じなくともある程度のコミュニケーションが可能と言える。本稿では、人間同土のコミュニケーションで一般的に行われている身振り手振りといった非言語情報を用いて、情報(自分の意志)を伝えることに着目した。人間同士のコミュニケーションを人間とエージェント間に適用し、様々な状況やコマンドを人間の動作から人間の意図の工学モデルである人工オントロジーを構築することにより読み取り、自律的に判断し、行動する自律型人間共生エージェントシステムの構成法を示す。このシステムでは、各エージェントが人間に対する人工オントロジーを構築し、それをエージェント間で共有することによって、意図表現の個人差や状況による違いに対応する。人工オントロジーは、双方向連想記憶ネットワークによる概念ファジィ集合を用いて構築し、動作認識には同様に双方向連想記憶によるファジィ連想推論を利用する。エージェントシステムにおいて、人工オントロジーによる情報共有の有効性を示す。本稿の目的は、人間にとって自然なインターフェイスを擁したエージェントシステム、すなわち、人間中心型システムを構築することである。本稿では、人間支援の各種ロボットヘの適用において有効性を示す。