知能と情報
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原著論文
異文化体験ゲームにおける集団適応エージェントの開発
大村 英史片上 大輔新田 克己野澤 孝之近藤 敏之
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2009 年 21 巻 5 号 p. 734-746

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抄録
エージェントの人間の社会への進出に伴い,人間とエージェントの間の相互作用(HAI:Human-Agent Interaction)の研究が活性化している.しかしながら,社会の中での人間とエージェントの関わり方の方法論は確立されていない.そこで,本論文では社会適応の一つの手段として「集団内の暗黙のルールの獲得」に注目し,社会的な集団適応エージェントを実現することを目的としている.社会集団にはルールが存在していると言われている.もし集団に属するあるメンバーがこのルールに従わない場合,集団の他のメンバーと協調できないばかりか攻撃されかねない.このように,集団に適応するためには,その集団におけるルールを獲得しそれに従うことが重要であると言える.そこで,人間の集団内のルール獲得を観察し,その知見を用いて集団内のルール獲得によって集団適応を行うエージェントの設計を提案する.はじめに,集団ルール獲得ができる環境を構築する.これは,異文化体験シミュレーションゲームBARNGAをベースにOnline BARNGAとして作成する.この環境内で人間同士によるゲームを行い,人間のルール獲得の過程の観察を行う.これにより,人間が暗黙の集団ルールを獲得する際には,「気づきの有無」と「ルールに従った振舞いの有無」により分類できる3つの内部状態間の遷移を行うことと,暗黙の集団ルール獲得には、勝者判定規則の獲得とゲームに勝つための集団戦略獲得が存在することの2つの獲得があることが観察できた.次に,人間の暗黙のルール獲得に関わる内部状態の遷移のタイミングを調べるために,fNIRS(機能的近赤外線分光法)を用いて,実験時の被験者の前頭葉の脳活動計測を行い,状態遷移がどのタイミングで行われたかの知見を得た.これらの知見を用いて,「気づき」と「振舞い」による3つの内部状態の遷移と,勝者判定規則と集団戦略を別々に学習するエージェントの設計方法を提案する.さらに,このエージェント同士でOnline BARNGA上でゲームシミュレーションを行い,人間の知識獲得のプロセスの結果と比較を行う.これにより,提案したエージェントが人間と同じ戦略に収束していることから,人間と同じ暗黙のルールへの適応を行う機能を持っていることを示すことができ,これをもって集団適応エージェントの提案とする.
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© 2009 日本知能情報ファジィ学会
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