知能と情報
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原著論文
人工社会モデルによる地方都市まちづくり政策に関する考察
秋山 孝正奥嶋 政嗣井ノ口 弘昭
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2011 年 23 巻 4 号 p. 428-437

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抄録

地方都市においては,都市域の拡大から中心市街地の商業的な衰退が問題となっている.このため,中心市街地活性化を目指したまちづくり政策が提案されている.まちづくり政策は,市民の都市活動と商業店舗の活動を行政が支援することによって,中心市街地の商業販売額の増加を意図している.実際には,都市活動の定量的評価結果に基づいて,まちづくり政策の議論が行われることは少ない.これは従来型の集計的な現象記述モデルでは,複雑な都市活動の相互関係が表現できないことが一因である.そこで本研究では,都市活動を複雑系としてモデル化する.具体的には,地方都市の市民と商業店舗を自律的エージェントとする人工社会(Artificial Society)を構成する.特に市民エージェントに関して,自由活動場所と交通機関を併せた選択行動をファジィ推論により記述する.また商業店舗エージェントに関しては,商業販売額と来訪者数によって商業魅力度が時間変化する過程をモデル化している.この人工社会モデルにより,無政策時の中心市街地の商業活動の減退の状況が把握できる.また基本的なまちづくり政策により多面的な中心市街地の活性化の傾向を知ることができる.さらに個別のまちづくり政策を単独で実行する場合に比べて,同時にまちづくり政策を実行するいわゆる総合的政策の優位性を示すことができる.最終的に,まちづくり評価のための人工社会モデルにより,市民単位の都市活動の集積として商業活動を表現して,自律的な「まちづくり過程」の出現可能性が示された.

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© 2011 日本知能情報ファジィ学会
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