知能と情報
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23 巻, 4 号
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目次
巻頭言
挨拶
特集:「建築・土木分野におけるソフトコンピューティングの応用」
特集論文: 建築・土木分野におけるソフトコンピューティングの応用
原著論文
  • 河野 高英, 堤 和敏
    2011 年 23 巻 4 号 p. 380-390
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    1.目的
    建築分野をはじめ様々なものづくりの分野において形状・形態はデザイナーの手によって考案されている.しかしながら,その発想範囲はデザイナー固有の教育・環境等の背景に依存しており,発想を制限されてしまう弊害が指摘されている.建築物のファサードは特に訪問者の印象を左右しデザインの良し悪しのイメージが非常に重要であるため,ファサードの成り立ちや歴史等の様々な研究・知識化が行われているが具体的なデザインイメージに結びつくシステムとはなっていない.そのためファサードのディテールまで表現し設計者の嗜好を考慮しつつ,設計者の従来の発想を打破するような新たな方向性のデザインを創生する発想支援システムがあれば有効である.本研究の目的はオフィスビルのファサードを対象とし,設計者に新たなデザインに対する「気づき」を与える発想支援システムの開発を行うことである.既往研究では,IDEの評価個体数の違いについての検証を目的としたが,本稿では,効率良く多くのバリエーションのデザイン創生を目的とし,IDEをベースとし,多様性を持たせたアルゴリズムIDES(得点対話型差分進化:Interactive Differential Evolution with Score)を提案する.IDEと比較し,IDESの個体の多様性とシステムの有効性について検討を行う.
    2.手法
    現存するオフィスビルの画像を収集し,比較分類することにより形態要素を58個抽出し,その58個の形態要素を個体ベクトルに置き換えることによりIDE,IDESのアルゴリズムに組み込み,VRMLを用いて3D画像によりファサードを表現するシステムを構築した.本システムの検証については主に建築を学んでいる被験者20人を対象に検証を行った.
    3.結論
    多様性を持たせるために提案したアルゴリズムIDESはIDEと比べ重複のない異なるデザインが8割方創生された.また「とても良い(2点)」の個体はIDEと比べて2倍程出現させることができ,本システムの目的である発想支援として有効なアルゴリズムとなることを示すことができた.形態要素の妥当性について様々なバリエーションを持ち,かつ現実的なデザインが創生されていることから既往研究で抽出した形態要素は妥当であるといえる.
  • イメージと力学的合理性の2目的評価
    武田 侑也, 堤 和敏
    2011 年 23 巻 4 号 p. 391-399
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    目的
    近年,コンピュータ性能が向上し,さまざまな分野において進化計算を用いたシステム最適化が行われている.大スパン屋根は自由な形態を作ることが出来るが,形態によって力学的性能は大きく違ってくる.また,デザイン性も要求されるが,デザイン性と力学的合理性についての研究は少ない.本研究室では大スパン屋根形態を対象とした,遺伝的アルゴリズム(以下GAと呼ぶ)を用いて設計者のイメージを満足し,尚且つ力学的合理性の高い形態を提案する発想支援型形態創生システムを構築している.しかし,既研究で提案できる形態は左右対称の形態に限られており,また提案された形態が必ずしも設計者のイメージを満足している保証はない.これらの課題を解決し,より有効なシステムとするために本研究の目的は以下の3点とした.
    1)非対称形態のイメージ入力を可能にすること
    2)トレードオフの関係にある「イメージ」と「相当応力」の2目的最適化問題としてパレート解を提案し,最終形態を設計者が決定出来るシステムを構築すること
    3)合理性を高めるために必要な形態変化に関する設計知識を得ること
    手法
    旧システムのイメージ入力はX方向,Y方向の2方向で行っていたが新システムでは3方向(X1方向,Y1方向,Y2方向),4方向(X1方向,X2方向,Y1方向,Y2方向)からのイメージ入力により,さらに複雑な形態を創り出すことを可能にした.形態はスプライン曲線の制御点で定義される.この設計者のイメージ入力より形成された形態に,形態を定義している制御点を,変動倍率を考慮して変動させシステムを実行し,力学的合理性の高い形態を変動倍率別に提案する.実行結果より,変動倍率の違いによって,形態がどのように変化していくかを分析する.
    結論
    制御点変動倍率を大きくすることで相当応力は小さくなるが,初期形態からの変化も大きくなり,「イメージ」と「相当応力」はトレードオフの関係にあるといえる.制御点変動倍率別に複数の形態を創生することで,設計者が自分のイメージで力学的合理性のある形態を選定することが可能になった.既存研究より,複数の曲率を持つ曲面は単曲率に近づくことで形態の力学的合理性が高まるという設計知識が得られているが,モデル1,モデル2の実行結果より,この知識を再確認することが出来た.
  • 奥 俊信
    2011 年 23 巻 4 号 p. 400-410
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    曲面上に点を布置し,その点を基準にして曲面を段階的な領域に分割する,もしくは区別する方法を提案する.この方法によって自由な曲面を基にして,線的な形態から面的な形態まで形成できることを示す.基本的なアイデアは,曲面上の点を母点としたボロノイ図を適用すること,次に空間を正方格子で分割して離散化すること,そして正方格子に限定されたランダムグラフを作成し,そのグラフを用いて曲面上の距離を計測することにある.以上の方法を用いて,境界に幅を持たせた曖昧な境界をもったボロノイ図を作成することで線構成から面構成までの形態を作成できることを示す.そして具体的に,波打つ曲面,直方体,半球,自由曲面に適用した作例を示す.近年,技術の進歩により自由な形態の建築が可能になりつつあり,この方法が自由な形態の開発に役立つことを目指している.
  • 寺口 敏生, 田中 成典, 西江 将男
    2011 年 23 巻 4 号 p. 411-427
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,情報関連技術の普及と発展に伴い,カーナビゲーションを代表とする地理空間情報サービスが普及している.しかし,地理空間情報サービスの基盤となる地図情報の整備は人手による現地踏査に依存しているため,新店舗の開店などの実空間の情報変化に地図情報が追従できていない問題がある.そこで,著者らは,Web上の新店舗の開店情報を対象として,自然言語から店舗名,住所や業種などの店舗情報を自動収集するテキストマイニングの研究を行ってきた.しかし,新規開店に関連するキーワードだけを用いてマイニングを行った場合,業種別の単語出現傾向の違いや,単語の連接関係によって生じるノイズなどの自然言語の曖昧性に起因する課題に加え,情報自体の正誤を評価できないという課題に直面した.そこで,本研究では,キーワードによるマイニングに加え,マーケティング分析の指標に基づいて,店舗の業種と出店位置の地理的特性との関係を活用することで,これらの課題を克服することを目指す.実験から,地理的特性を考慮した情報を評価することによって,新店舗に関する開店情報を高精度に取得できることを実証した.
  • 秋山 孝正, 奥嶋 政嗣, 井ノ口 弘昭
    2011 年 23 巻 4 号 p. 428-437
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    地方都市においては,都市域の拡大から中心市街地の商業的な衰退が問題となっている.このため,中心市街地活性化を目指したまちづくり政策が提案されている.まちづくり政策は,市民の都市活動と商業店舗の活動を行政が支援することによって,中心市街地の商業販売額の増加を意図している.実際には,都市活動の定量的評価結果に基づいて,まちづくり政策の議論が行われることは少ない.これは従来型の集計的な現象記述モデルでは,複雑な都市活動の相互関係が表現できないことが一因である.そこで本研究では,都市活動を複雑系としてモデル化する.具体的には,地方都市の市民と商業店舗を自律的エージェントとする人工社会(Artificial Society)を構成する.特に市民エージェントに関して,自由活動場所と交通機関を併せた選択行動をファジィ推論により記述する.また商業店舗エージェントに関しては,商業販売額と来訪者数によって商業魅力度が時間変化する過程をモデル化している.この人工社会モデルにより,無政策時の中心市街地の商業活動の減退の状況が把握できる.また基本的なまちづくり政策により多面的な中心市街地の活性化の傾向を知ることができる.さらに個別のまちづくり政策を単独で実行する場合に比べて,同時にまちづくり政策を実行するいわゆる総合的政策の優位性を示すことができる.最終的に,まちづくり評価のための人工社会モデルにより,市民単位の都市活動の集積として商業活動を表現して,自律的な「まちづくり過程」の出現可能性が示された.
  • 林 将利, 永井 拓生, 新谷 眞人
    2011 年 23 巻 4 号 p. 438-446
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    本論文では,既存学校建築のリノベーション設計支援システムを提案する.既存学校建築の多くは,耐震性の問題と建築計画上の機能的な問題を有している.これらの問題を同時に解決するため,多目的遺伝的アルゴリズムを用いた設計支援システムを提案する.本手法の対象として,実在する既存学校建築と地域や児童数などの背景を考慮し,(i) 余裕教室を利用した躯体維持モデル,(ii) 既存校舎を利用した躯体増築モデル,(iii) 廃校施設を利用した躯体減築モデルの3種類を設定する.これらのモデルに対しそれぞれ耐震性および計画的要求を考慮したリノベーションの最適化問題を定式化し,既存学校建築のリノベーション要求に適合する複数の設計可能な解を提示することを目的とする.
  • - 獲得したルールと形態に関する考察 -
    山邊 友一郎, 有吉 智彦, 谷 明勲
    2011 年 23 巻 4 号 p. 447-456
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,人口が減少段階に転じつつある日本において,既存の集合住宅の有効活用は重要な課題である.住戸の空スペースを活用し,建物の構成を変化させることで,魅力的な住空間に再生する手法として,減築が有望視されている.減築とは,既存の建物に対して,切り取る,抜けをつくる,などの建物のボリュームを減らす改修を行うことにより,住環境を向上させる手法である.本稿で論じるような集合住宅の配置計画を対象とする場合,膨大な解空間から限られた時間で準最適解を得るために,進化的計算手法を用いた研究が多数実施され,有効性が検証されている.本稿では,減築による既存集合住宅の再生を対象とする点及び,最適化手法としてクラシファイアシステムを適用する点に特徴がある.クラシファイアシステムはルール強化型の学習システムであり,進化の結果として減築後の住宅形態を得るのみではなく,進化の過程で用いる減築ルールを得られるため,どのような経過で減築を行ったかを追跡することが可能である.そこで本稿では,構築したシミュレーションにより減築ルールを獲得し,考察を加えることによって,クラシファイアシステムの有効性を検証することを第一の目的とする.次に,獲得したルールを用いて実際に集合住宅の減築を行い,得られた形態を対象として考察を行うが,設定した評価指標を目的関数として遺伝的アルゴリズムを適用して得られた形態を比較対象とすることにより,評価指標を満足する形態を獲得可能なルールを得られたか否かの検証を行うことを第二の目的とする.
  • 堀 駿, 林 将利, 永井 拓生, 新谷 眞人
    2011 年 23 巻 4 号 p. 457-468
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    現代の住宅産業において,建設廃棄物の削減が深刻な課題となっており,同時に,住宅に対する居住者の要求は多様化している.つまりこれまでの大量生産・大量供給という手法から,少量多品種へのパラダイムシフトが必要とされている.こういった課題に対し,例えば政府先導による“200 年住宅” が提唱されている.この政策は住宅の高耐久性を掲げているため廃棄物抑制は促進されるが,長期的な視野においては居住者の要求やライフスタイルの変化には追従することは困難と考えられる.一方,構造部材をあらかじめ工場で一定の単位で組み合わせたユニットとして製作し,現場においてそれらを組み立てるという“ユニット住宅” という考え方があるが,リサイクルの効率に優れるものの,平面形状や規模などの自由度に対しては,依然として大きな制約が存在する.本研究においては,住宅における居住者の要求変化に対応させながらも,解体・再生時に構造部材を廃棄することなく効率よく転用,循環を繰り返す「20 年住宅」の概念について検討する.そこで,構造部材の転用と循環の効率性を定量的に扱うための目的関数について考察し,多目的最適化問題を定式化する.また,実際に最適化手法により複数の住宅モデルを作成し,これらを用いた長期間に亘る構造部材の転用と循環のシミュレーションを行い,住宅の解体・再生にあたって,実際にどの程度の構造部材の転用が可能か,検討を行なう.以上のフローを辿る事により,「20 年住宅」の有用性を確認する.
  • 中津 功一朗, 古田 均, 野村 泰稔, 高橋 亨輔, 石橋 健, 三好 紀晶
    2011 年 23 巻 4 号 p. 469-479
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,橋梁維持管理の必要性が高まる中,一方では,優秀な維持管理技術者の不足や予算削減により,持続的な維持管理が困難となっている.維持管理における費用削減と橋梁の安全性を向上させる方法として,長期的な維持管理計画の策定が試みられており,実用化に向けた研究がなされている.しかし,劣化予測などの不確実性から生じる計画変更の必要性やコスト平準化のような課題が存在する.本論文では,長期的な維持管理計画策定における意思決定支援システムの構築を目指し,不確実性による計画変更への対応方法を提案する.提案手法では,遺伝的アルゴリズムを用いて予防保全を考慮し,補修年度を前倒しした計画を策定する.このとき,有用な準最適解が複数存在することから,遺伝的アルゴリズムにより得られる解には曖昧さが存在する.本論文では,その曖昧さに着目し,策定された計画に対して数値シミュレーションを用いることで,橋梁の安全性を維持しながら補修年度を変更可能な期間の推定,および提示することを試みる.推定により得られた変更可能な期間を用いた意思決定によって維持管理業務を遂行することで,不確実性に対してフレキシブルに対応できると考えられる.数値実験として,複数橋梁に対する維持管理計画を策定することにより,提案手法の有用性を検証する.
  • 味方 さやか, 小林 一郎
    2011 年 23 巻 4 号 p. 480-490
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    災害が起こった際には,複数のライフラインが同時に被害を受ける可能性がある.その際,我々は迅速かつ効率良く都市機能を復旧させる計画が必要となる.都市機能においては,複数のライフラインは相互依存関係を持っていることが考えられ,被災地の復旧順序や復旧人員の配置は被害地域全体の復旧速度に大きく影響する.現在までに一つのライフラインの復旧計画問題を解く研究は多くなされてきたが,複数のライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画問題を解く研究は少なく,とても重要であると考えられる.そこで,本研究では複数のライフラインが同時に被害を受けた状況を想定し,ライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画を作成することを目的とする.復旧計画作成手法として,遺伝的アルゴリズムを用い,複数の制約条件下における組み合わせ最適化問題を解くことにより課題を達成する.遺伝子のコーディングにおいては,復旧班の配置と復旧順序を同時に考慮した遺伝子モデルを利用して計算することにより,ライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画の作成を実現しているまた,提案した遺伝的アルゴリズムを用いた解法の性能を向上させるために Random Flip という局所探索手法を導入し,満足する災害復旧計画を少ない計算時間で求められることを確認した.
  • 奥嶋 政嗣, 秋山 孝正
    2011 年 23 巻 4 号 p. 491-500
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    都市高速道路における交通制御方法は,近年の各種情報技術の進展に伴って,流入台数の高度な調整方法の適用が可能となってきている.また,既往研究では,都市高速道路における流入制御に関して,各種流入制御方式に含まれる経験的知識の実用的利用方法が検討され,ファジィ制御として定式化されている.さらに,流入台数の高度な調整方法に対応するために,各種制御パラメータの最適設定に GA が適用され,実証的データを利用した高度な適用性を持つファジィ流入制御モデルの構築手順が示されている.本研究では,多様な制御要因への現実的対応の面から,ファジィ流入制御の適用性を検証する.具体的には,日常的な交通集中渋滞に対応するために開発されたファジィ流入制御モデルを,交通事故発生時の交通制御に適用し,その転用性を検証する.また,交通事故発生時における交通制御に関する知識獲得を行い,ファジィ制御の柔軟性を生かして,既存の制御ルールを更新する.この交通事故発生時に対応したファジィ流入制御モデルの制御効果を検証する.これより,ファジィ流入制御の実用面からの適用性の向上を図るとともに,これからの都市高速道路の流入制御方式の方向性として知識獲得型ファジィ制御の有用性が示される.
  • 廣安 知之, 中村 彰之, 三木 光範, 吉見 真聡, 横内 久猛
    2011 年 23 巻 4 号 p. 501-512
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,照明制御システムにおいて「とても明るく」や「やや暗く」のようにユーザが感覚的に明るさを指示し,その尺度を強化学習手法の一つであるActor-Criticアルゴリズムを利用して学習するシステムを構築する.このシステムではユーザの要求とユーザ周辺の明るさの2種類の状態に応じた行動を取るように学習する必要がある.本研究では効率良く学習を行うために,2種類の状態それぞれに対応した2種類のActorを備えたActor-Criticアルゴリズムを構築した.本稿ではそのアルゴリズムの概要とその有効性を示す.
  • 安彦 智史, 田中 成典, 村本 晋一, 上谷 弘平, 若林 克磨
    2011 年 23 巻 4 号 p. 513-527
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    人や物の交通流動情報は,交通計画やエリアマーケティングなどの都市計画を行う場合の社会基盤情報として広く利活用されている.しかし,交通流動情報は,公共交通機関の利用者のアンケート調査によるものや,街角での調査員の目視計測に頼っているが,これらは多大なコストが生じる問題がある.そのため,レーザーセンサやデジタルビデオカメラを用いて交通流動情報を自動的に計測するための研究が行われている.前者のレーザーセンサを用いた方法では,あらゆる環境でも高精度に移動体の交通計測を行うことが可能であるが,そのアピアランスの情報を取得できず,移動体自体の正確な属性情報を把握できない.一方,後者のデジタルビデオカメラを用いた方法では,移動体のアピアランスの情報を取得し,解析することができるが,照明変化や日照変化といった撮影環境の変化や移動体の重なりによるオクルージョンが生じた環境下では計測精度が低下する問題がある.そこで,本研究では,人物だけに焦点を当てて,レーザーセンサとデジタルビデオカメラの特性を加味した距離画像センサを用いることで,難しい撮影環境やオクルージョンが生じる環境下においても,属性情報を付与した正確な人物の流動情報の計測と取得を実現する.
  • -最適な背景画像の推定方法-
    谷口 寿俊, 西田 義人, 田中 成典, 加藤 雄大
    2011 年 23 巻 4 号 p. 528-540
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,デジタルカメラの普及と画像処理技術の発達に伴い,パノラマ画像を容易に撮影できるようになった.パノラマ画像は,広範囲の風景を一枚の画像で表現でき,建物や道路などの構造物を容易に把握できることから,建設業務の進捗記録や成果品に利用されるなど,需要も飛躍的に高まっている.しかし,施工時や完成時の構造物に関係のない重機や作業員がパノラマ画像に映り込んでいては,正確な進捗管理や精緻な品質検査を実現する上で好ましくない.そこで,本研究では,デジタルビデオカメラを用いてフリーハンドで撮影したデジタル動画像の時系列特性を利用して,複数の時系列デジタル画像から背景に最も適した画像を見出し,結果的に移動体を除去した平面パノラマ画像を自動生成する手法を提案する.まず,デジタル動画像から取得したフレーム画像に対して位置あわせを行う.次に,補正後のフレーム画像から STV(Spatio Temporal Volume)を生成する.最後に,STVのEPI(Epipolar Plane Image)から背景画素を推定することで,移動体を除去した平面パノラマ画像を生成し,本研究手法の有効性とパノラマ画像の有用性を確認する.
  • -領域抽出による移動体除去方法-
    西田 義人, 田中 成典, 谷口 寿俊, 加藤 雄大
    2011 年 23 巻 4 号 p. 541-554
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    近年,デジタルカメラの普及と画像処理技術の発達に伴い,複数枚の画像から広範囲を撮影したパノラマ画像を容易に取得できるようになった.特に,全周パノラマ画像は,撮影者から見た周囲状況の表現に優れる特性があることから,市街地の道案内や,3Dシミュレーションなどと非常に親和性が高い.また,Google Street Viewなどのパノラマビューシステムの普及も相まって,その活用範囲は飛躍的に拡大している.しかし,大衆の目に触れるサービスに利用されるパノラマ画像に映っている人物や車両は,周囲状況の把握には不要な情報であり,プライバシー保護の観点からも好ましくない.そこで,本研究では,デジタルカメラの動画撮影機能を用いて,フリーハンドで撮影した動画像から切り出したフレーム画像の移動体領域を特定し,移動体を背景に補完した全周パノラマ画像を生成する手法を提案する.まず,動画像の各フレームに特徴点を生成する.次に,それらを用いて画像間の対応点を取得し,基準画像に重なるように位置あわせを行う.そして,補正した画像列から移動体領域を特定する.最後に,移動体抽出画像の移動体領域を背景領域に補完しながら円筒面に投影することによって移動体を除去した全周パノラマ画像を生成する.
  • 田中 成典, 今井 龍一, 樫山 武浩, 渡辺 完弥
    2011 年 23 巻 4 号 p. 555-571
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    建設CALS/ECが推進される中,公共事業の更なる生産性の向上を図るためには,ライフサイクルに亘った図面の利活用が重要となる.しかし,図面はライフサイクルの各フェーズでフォーマットが異なっている.例えば,国土交通省の道路事業では,測量は拡張DM,設計や工事はCAD(SXF),維持管理はGISで管理している.そのため,国土交通省では,拡張DMからCAD/SXF変換,CAD/SXFからGIS変換のシステムを開発し,データの利活用を図っている.一方,地方公共団体の運用に着目すると,公共事業で利用する測量や設計,工事のフォーマットは国土交通省と同様である.しかし,維持管理では,拡張DMで管理していることが多い.そのため,地方公共団体では,工事成果のCAD/SXFデータを拡張DMに変換し,維持管理で利用する拡張DMデータを効率よく整備するニーズがある.しかし,諸外国や日本では,CAD/SXFから拡張DMに変換する標準仕様や変換システムが整備されていない.本研究では,CAD/SXFから拡張DMへの変換仕様を考案し,CAD/SXFから拡張DMに変換するシステムを開発した.そして,実験データおよび公共事業で利用されている工事成果の図面(CAD/SXF)を拡張DMに変換する実験を行い,本研究で考案した手法の有用性を確認した.
  • 田中 成典, 今井 龍一, 中村 健二, 川野 浩平
    2011 年 23 巻 4 号 p. 572-590
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    公共事業では,工期短縮,品質確保やコスト縮減を目的に,ライフサイクル全般で建設CALS/ECが導入されている.特に最近は,工事段階を対象に3次元データを活用した情報化施工の環境の整備が注目されている.そのため,トータルステーションやレーザスキャナなどで現場計測した点群座標データから,3次元モデルを作成することが期待されている.しかし,測量時に取得した大量な点群座標データの扱い方の課題と,情報化施工の要求精度の課題とを解決する必要がある.著者らは,これまでに大量な点群座標データから情報化施工の要求精度を満たした河川堤防の3次元モデルを作成する技術を考案してきた.これは,レーザスキャナを用いて計測した河川堤防の点群座標データと河川堤防のDMデータとを併用して,河川堤防の天端面と法面との境界線(ブレイクライン)を自動的に抽出し,CAD上に3次元モデルを生成するものである.しかし,DMデータの更新サイクルによる鮮度の課題と,河川堤防の天端面と法面との間に植生などのノイズを原因とするブレイクラインの誤抽出の課題が残された.本研究では,これらの課題の解決策として,点群座標データから河川堤防の天端面領域を推定してブレイクラインを自動的に抽出する手法と,堤防の天端面上に存在する植生などのノイズの点群座標データを除去する手法を考案する.そして,評価実験を行い,考案した解決策の有用性を立証する.
特集:「第15回曖昧な気持ちに挑むワークショップ選抜論文」
特集論文: 第15回曖昧な気持ちに挑むワークショップ選抜論文
ショートノート
原著論文
  • 高萩 栄一郎
    2011 年 23 巻 4 号 p. 596-603
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    2種類のベクトル値型ショケ積分モデルを提案する.ベクトル値型ショケ積分モデルは,m個のファジィ測度でm回のショケ積分で出力値を求める.このモデルは,行列とベクトルの積の拡張になっている.論理型ベクトル値型ショケ積分モデルは,ファジィ測度を [0, 1] の値に拡張し,入力値,出力値ともに [0, 1] の値をとるモデルである.もし,定義域のすべての部分集合に対して,ファジィ測度の値の和を1にすると,出力値の和は1になる.ある集合Qによる対称差表示を導入することにより,非単調なファジィ測度の一部は,単調な集合関数に変換でき,シャプレイ値等で解釈できる.
  • 福田 亮治, 岡 薫
    2011 年 23 巻 4 号 p. 604-611
    発行日: 2011/08/15
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    評価関数があることが想定されるデータに対し,順位データが複数与えられた場合,そこに内在すると仮定する定量化された評価値を推定する手法を提案し、乱数を用いたシミュレーションと,グレー画像の明るさに関するアンケート調査をもとに,その有効性の検証を行った.この推定では,共通の評価値に一定の分布に従う観測誤差を加えたモデルに基づき,最尤推定により元の評価値を予測する手法を用いた.これにより,データにしかるべき多様性があれば,よい近似が可能であることが分かった.
解説
報告
書評
用語解説
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