目的
近年,コンピュータ性能が向上し,さまざまな分野において進化計算を用いたシステム最適化が行われている.大スパン屋根は自由な形態を作ることが出来るが,形態によって力学的性能は大きく違ってくる.また,デザイン性も要求されるが,デザイン性と力学的合理性についての研究は少ない.本研究室では大スパン屋根形態を対象とした,遺伝的アルゴリズム(以下GAと呼ぶ)を用いて設計者のイメージを満足し,尚且つ力学的合理性の高い形態を提案する発想支援型形態創生システムを構築している.しかし,既研究で提案できる形態は左右対称の形態に限られており,また提案された形態が必ずしも設計者のイメージを満足している保証はない.これらの課題を解決し,より有効なシステムとするために本研究の目的は以下の3点とした.
1)非対称形態のイメージ入力を可能にすること
2)トレードオフの関係にある「イメージ」と「相当応力」の2目的最適化問題としてパレート解を提案し,最終形態を設計者が決定出来るシステムを構築すること
3)合理性を高めるために必要な形態変化に関する設計知識を得ること
手法
旧システムのイメージ入力はX方向,Y方向の2方向で行っていたが新システムでは3方向(X1方向,Y1方向,Y2方向),4方向(X1方向,X2方向,Y1方向,Y2方向)からのイメージ入力により,さらに複雑な形態を創り出すことを可能にした.形態はスプライン曲線の制御点で定義される.この設計者のイメージ入力より形成された形態に,形態を定義している制御点を,変動倍率を考慮して変動させシステムを実行し,力学的合理性の高い形態を変動倍率別に提案する.実行結果より,変動倍率の違いによって,形態がどのように変化していくかを分析する.
結論
制御点変動倍率を大きくすることで相当応力は小さくなるが,初期形態からの変化も大きくなり,「イメージ」と「相当応力」はトレードオフの関係にあるといえる.制御点変動倍率別に複数の形態を創生することで,設計者が自分のイメージで力学的合理性のある形態を選定することが可能になった.既存研究より,複数の曲率を持つ曲面は単曲率に近づくことで形態の力学的合理性が高まるという設計知識が得られているが,モデル1,モデル2の実行結果より,この知識を再確認することが出来た.
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