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サービス工学(Service Engineering)
本村 陽一
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2013 年 25 巻 6 号 p. 195

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抄録

産業構造が製造業からサービス業へシフトし,技術の成熟に伴う製品のコモデティ化,生活における経験価値への意識の変化,環境意識の高まりによる脱物質化などの時代的な背景によって「サービス」に対する重要性が高まっている.工学は歴史的に工業製品などの物理的実体を伴うモノを対象に発達してきたが,物理的実体を伴わないサービスを対象にした工学体系や教育の必要性が強く認識されたことで,最近「サービス工学」と名付けられた研究教育活動が幾つかの大学や研究機関で開始され,2012年にはサービス工学を含むサービス研究の母体となる国際学会,サービス学会が発足した.国内では製造業のサービス化,サービス業の生産性向上,の2つの流れから産業と連携した具体的活動が特長である.海外ではService Marketingの分野で提唱されたServiceDominant Logic,IBMが提唱したService Scienceに始まり,現在ではManagement,Engineering,Designと概念と研究領域を拡大しながら,サービスに関連する国際会議の開催も増えつつある.

サービスが人間や社会の相互作用として表出され,サービスの価値は人の主観性に基づいて評価されることから,人間工学や社会科学分野の研究領域とも関連が深い.またサービスを実行する主体は組織や集団であることから経営,マネジメント,教育心理学などの知見も重要となる.さらに応用領域は産業応用に限らず医療・看護・介護領域や観光や公共サービス,地域振興,生活支援など多岐に渡る.そこでサービスに少しでも関連のある既存学問領域と密接に関わりながら,これまで個別要素や特定の関心から細分化して扱われていた「生活空間の現象」を包括的なシステム観の元に再構築することもサービス工学の役割として期待される.とくにこれまでの産業に対して工学が果たしてきた役割を果たすためには,物理,機械,情報に対して行われてきた空間表現の確立や定式化,計算操作可能なモデル化による予測と制御,支援システムとしての実装技術などをサービスに対して確立することが重要であろう.

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© 2013 日本知能情報ファジィ学会
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