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非加法的測度(Non-additive Measure)
室伏 俊明
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2014 年 26 巻 4 号 p. 163

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抄録

非加法的測度とは,菅野によって定義されたファジィ測度と実質的に同義である.

測度は,現代数学における基本概念の1つであり,外延量の数学的表現である.ここで外延量とは,長さ,面積,体積,質量などの広がりに規定される量をいう.測度とは,性質 n(0/)=0 と加法性「 A∩B =0/ ⇒ n( A∪B )= n(A)+ n(B)」をもつ,全体集合 X の部分集合族 上に定義された関数 n: →[ 0, ∞] である(厳密には はv 集合体であり, n はv 加法性をもつ).P(X)=1 ,すなわち全体集合 X の値が1である測度 P は確率測度と呼ばれ,これは確率の数学的表現である.測度を対象とする数学理論を測度論と言う.

1972 年,確率法則に縛られない主観的な確からしさを表すため,菅野はファジィ理論に,確率測度の持つ加法性をより弱い条件である単調性「A⊆B ⇒ n(A) μ(B)」に置き換えて定義されるファジィ測度を導入した(ファジィ測度の当初の定義では,連続性などの条件も課せられていたが,その後の数学的研究ではそれらの条件は課されないことも多い.ここでもそれらは考えない).このファジィ測度はファジィ理論における概念だが,ファジィ集合とは数学的に無関係である.

一方,数学においても測度論に,測度の持つ加法性を単調性に置き換えて定義される非加法的測度が導入され,測度論を拡張する研究が行なわれてきている.ファジィ測度と非加法的測度の数学的研究は独立に行なわれてきたが,近年,それらの研究は互いに影響し合い,融合されつつある.ファジィ測度という名称はファジィ集合と数学的に関係があると誤解されやすいこと,非加法的測度という名称の方が中立的な印象を与えることなどから,ファジィ理論においても,ファジィ測度は非加法的測度と呼ばれることが多くなってきている.

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© 2014 日本知能情報ファジィ学会
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