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狩野モデル(Kano model)
上江洲 弘明
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2015 年 27 巻 4 号 p. 128

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抄録

狩野モデルとは,東京理科大学名誉教授の狩野紀昭(かのう のりあき)らによって考案された品質要素の分類および特徴づけの手法として開発されたモデルである.この分析法により,顧客の認識する品質を分類して整理することが可能になった.品質の整理・分類のため,狩野らは顧客の満足感・物理的充足状況の対応関係から,品質要素(属性)を以下のように区分した.

・魅力的品質要素:それが充足されれば満足を与えるが,不充足であっても仕方がないと受けとられる品質要素.

・一元的品質要素:それが充足されれば満足,不充足であれば不満を引き起こす品質要素.

・当たり前品質要素:それが充足されれば当たり前と受け止められるが,不充足であれば不満を引き起こす品質要素.

・無関心品質要素:充足でも不充足でも,満足も与えず不満も引き起こさない品質要素.

・逆品質要素:充足されているのに不満を引き起こしたり,不充足であるのに満足を与えたりする品質要素.

狩野モデルでは,顧客に対しある品質要素について「充足質問(もしこの品質要素があったならばどう思うか)」と「不充足質問(もしこの品質要素がなかったならばどう思うか)」を行い,その回答によって分類する.質問の回答は「とてもうれしい」「当然だろう」「特に何とも思わない」「別にそれでも構わない」「それは困る」の5つの中から1つを選択する.対象の品質要素を「あったならば」「なかったならば」の両側面から捉えることで,顧客の本質的な要求レベルを把握することが可能となる.これらの質問から得られた回答から,その要素の属性(上記5項目)を決定することが可能となり,製品の開発や改善において優先順位を決定することができる.狩野モデルによる分類法は,品質要素の優先順位付けだけではなく一般的なアンケートなどにも応用することが可能である.質問数の整理が必要になるが,効率的で効果的なリサーチが可能となる.

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© 2015 日本知能情報ファジィ学会
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