2016 年 28 巻 3 号 p. 655-665
脳高次機能の解明には,神経回路網における電気活動の時空間パターンを解析することが重要である.その際にノイズが混在したデジタル化電位信号データから正確に活動電位スパイクを検出する必要がある.また,ブレイン-マシンインタフェースへの応用を考えると,スパイク検出と神経信号の計測・保存とを同時に実行することが望ましい.本研究では,自発性の活動電位の頻度とノイズ信号が変動する状況にあっても,スパイク検出の閾値を適切に設定し,閾値ベースで神経信号を検出するシンプルなアルゴリズムを開発した.従来の手法ではスパイク検出数は正解の91.8%と若干低めに検出される傾向にあったものが,本研究手法では96.4%に向上し,取りこぼされた活動電位スパイクが減少した.また,神経信号で電子機器を制御する目的を想定し,複数電極から電位信号を記録すると同時にスパイク検出を行うプログラムを開発した.