コミュニティセントリックシステムとは,コミュニティを中心とした視点からシステムを構築することで,高齢者のQOL(quality of life)や防災,防犯,観光など,現代社会が抱える諸問題の解決に取り組むアプローチを指す.社会学において,コミュニティとは地域性と共同性により構成されている社会として定義される.すなわち,ある特定の地域において,情報や価値観,利害などを共有する集団がコミュニティとされる.近年では,地域性の解釈を拡張し,Web などのサイバー空間において共同性を満たす集団をコミュニティとみなすことも一般的である.このようなコミュニティにおける目標の達成と,構成要員それぞれにおける目標の達成は密接に関係している.しかし,個人の目標達成をボトムアップに積み上げるだけではコミュニティの目標達成に至らず,却って個人の目標達成を阻害する要因にもなりうる.個人にとって省エネの効果は見えづらく,自由に電力を消費した結果,最終的には電力不足や電力料金の高騰などの問題となって個人に不利益な状況をもたらす状況などが一例である.このように,コミュニティの視点から問題の本質をとらえ,個人に適切な支援・サービスを提供することで解決を図るべき問題が多く存在する.
コミュニティセントリックシステムが対象とすべき課題は,上述の省エネ問題の他,災害時に備えた日常時における地域コミュニティの形成や災害時の避難誘導,被災地での共起・共助関係の構築,独居高齢者のQOL や認知症徘徊者の見守り,観光回遊行動の把握・誘導や観光地発掘など多岐に渡る.主要な要素技術としては,ソーシャルメディアによる情報共有や集積されたビッグデータの解析,ユーザ支援のためのロボティクスや情報推薦などの知能情報技術などが挙げられるが,学際的な研究分野であるため,異なる研究領域に属する研究者の協調により進めていくことが期待される.