2019 年 31 巻 2 号 p. 690-699
ファジィ推論システムの学習に関する多くの研究が行われている. これらの研究 の多くが最急降下法を用いているが, パラメータの初期値設定により, 学習後 のモデルの精度やルール数が影響をうけることが指摘されている. これを改善 するための多くの方法が提案されているが, 必ずしも満足できるシステム構成 とはなっていない. ベクトル量子化を使って, パラメータの初期値を設定する 方法は, 少ないルール数で高い精度を実現する方法の一つとして知られている. 一方で, この方法の問題点としては, 後件部の重みパラメータの初期値設定を 行う効率的な方法が知られていないことである. それゆえ, 前件部パラメータ と後件部パラメータの初期値を設定する方法を最急降下法に取り入れることで, この学習法の能力改善が期待できる. 本論文では, あらかじめ学習用の入出力 データを用いて, ベクトル量子化により入力空間の分割とその空間での重み設 定を行い, これらをパラメータの初期値として用いるファジィ推論システムの 学習法を提案し, その有効性を示す.