2019 年 31 巻 3 号 p. 739-744
本稿では,自動車運転者の属性と運転状況に応じて発話戦略をポライトネス理論に基づいて選択し,音声合成発話によって運転を支援するエージェントを提案する.提案するエージェントシステムは,運転者の年代,性別,性格,運転歴,運転特性などの属性情報を考慮したうえで,受容性の高い発話戦略を選択し,支援を行う.ここでは,提案システムの開発に向けた調査として,運転支援場面を映した動画を用いて運転支援エージェントに対する印象評価実験を行った.特に,日本語会話における特徴的な心理的距離の表現方法である文末スタイルの違いに着目した.実験の結果,非敬語を用いるエージェントは,親密度の向上に有効である可能性が示唆された.一方で,敬語を用いるエージェントは慎重であるという印象を与え,正確に情報を伝えていると感じさせる可能性が示唆された.