2019 年 31 巻 5 号 p. 816-825
ヒューマンコンピュータインタラクションシステムがユーザの気持ちを考慮したりユーザの希望に沿った対応を行うためには,各ユーザがどのような事物を好きか嫌いかという嗜好情報が重要となる.しかし,一般的な嗜好情報データベースはあくまで普遍的な嗜好傾向を表しているにすぎず,個人差や経験による変化を考慮できない.しかし人間は会話を通じてリアルタイムに相手の嗜好情報を推定することができる.本研究では,【『Xに良い事があった』と喜んでいるならば,きっとXの事が好きなんだろう】のようなヒューリスティックに基づき,発話内容と口調から発話者の嗜好情報を推定する手法を提案する.本研究では情緒計算手法に基づいて発話内容の構文構造と話者感情の関係を表すことにより,上記のヒューリスティックを実現する.発話者の感情状態は,聞き手による感情推定結果を用いる.実験の結果,精度0.76,再現率0.88という結果が得られた.