2021 年 33 巻 3 号 p. 663-670
没入型VRシステムでは,バーチャル身体の形状が実身体と異なる場合に,その操作性が低下するという問題がある.これに対して著者らは,その原因が身体定位を実現する脳内モデルである身体図式の乖離にあると仮定し,実身体の形状に適合されている身体図式をバーチャル身体の形状へと更新する身体図式キャリブレーションについてVR技術を用いた手法を提案してきた.しかし,既存研究では身体図式更新の特性調査は伸長方向の狭い範囲に限定されていた.そこで,特性調査をさらに進めるため,本論文では収縮方向の特性調査はもとより,更新の限界なども明らかにするべく広範囲での身体図式更新の特性調査を行った.結果として,身体図式キャリブレーションは両方向で対称的な特性を示し,極度に変化させた場合では更新の効果が低下した.