2023 年 35 巻 2 号 p. 678-682
過誤記憶とは「起こってもいないことを覚えていたり,起こったこととは全く違うことを覚えていたりする」現象である.本研究では,記憶に関わる情報を共有する他者との関係性が過誤記憶の生成に与える影響を解析した.実験参加者はDRMパラダイムに基づいて選定された単語を記憶し,その単語について,オンライン会議システムを介して音声合成ソフトによるエージェントと情報の共有を行なった.実験の結果,明示した信頼度と実験参加者が体感した信頼度が一致した場合に過誤記憶の生成率が上昇し,女性エージェントよりも男性エージェントとの会話において過誤記憶の生成率が高い傾向が示唆された.また,実験参加者がエージェントに礼を行なうことで過誤記憶の生成率が上昇した.また,人ではなくエージェントと情報共有することは過誤記憶の生成には抑制的に働く可能性が示唆された.