知能と情報
Online ISSN : 1881-7203
Print ISSN : 1347-7986
ISSN-L : 1347-7986
原著論文
小集団の創造的意思決定と満足度のシミュレーションによる検討
椎久 翔太竹内 勇剛
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 38 巻 2 号 p. 633-645

詳細
抄録

小集団の意思決定では,各成員が自分の意見を自由に表明できるため,妥協や新たなアイデアが生まれやすいと考えられる.しかし,これまでの研究では,こうした創発的相互作用が合意形成や各成員の満足度にどのように影響するかについて十分な検証が行われてこなかった.本研究では,各成員の満足度を報酬に組み込んだ強化学習モデルを構築し,エージェントが議論の中で新たな意見を創発することで,合意形成と満足度にどのような影響を与えるかシミュレーションにより検証した.その結果,新たな意見によって個人の満足度が向上し,合意形成までのコストが削減されることが示唆された.また,言語を用いた現実世界への適応可能性や集団規模による意思決定過程の違いを大規模言語モデル(LLM)を用いた言語シミュレーションにおいても検証した.小集団では,エージェント全員がほぼ満足度の高い状態で議論を終え,議論の収束性が高いことが示された.一方,大集団では,満足度や意見の分散が顕著であり,意見の集約が困難であることが観察された.また,議論中に生成される単語や意思決定の構造にも違いがみられ,複雑な意思決定が求められる分野において,集団の規模や構成を適切に設計することの重要性が示唆された.

著者関連情報
© 2026 日本知能情報ファジィ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top