日本口腔インプラント学会誌
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症例報告
若年者の上顎前歯部におけるインプラント治療後20年間経過観察した1例
梅原 一浩小林 恒山崎 尚之夏堀 礼二田中 純一佐藤 雄大佐々木 智美木村 博人
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2018 年 31 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

若年者に対するインプラント治療の適応や埋入方法は,個々の成長と発育に左右されるため,慎重な診断と成長予測に基づいた治療計画が必須となる.今回,16歳女性の上顎前歯部にインプラント治療を行い,20年以上の長期に渡って機能的・審美的に満足な結果が得られたので報告する.

本症例では,20年の間にインプラント上部構造と隣在する中切歯切端との間に約2.1mmの差が生じた.このような垂直的位置変化には,顎骨の成長,第三大臼歯の萌出,永久歯列の経年的変化など種々の要因が影響するものと思われた.確かに,成長が終了するのを待ってからインプラント治療を行う方が望ましいと思われるが,先天性欠損や外傷による少数歯欠損などの理由から若年者にインプラント治療を求められることもある.そのような場合は,各々の患者の成長曲線,骨年齢,第三大臼歯の萌出力などによる影響やセファログラムによる矯正的分析を考慮しなければならない.また,隣在歯の位置を確認した後,インプラント体を口蓋側寄りとし,深くなりすぎないよう慎重に埋入することも重要である.

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© 2018 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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