日本口腔インプラント学会誌
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31 巻, 1 号
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特集Back to the Basics(臨床の疑問に答える)Part Ⅱ
  • 十河 基文
    原稿種別: 特集Back to the Basics(臨床の疑問に答える)
    2018 年 31 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    インプラント治療におけるエックス線診断はかつて「パノラマ診断」であった.しかし今や,「CT診断」の時代である.しかしCT診断といえども昔のような「大判フィルム」に焼かれた画像診断ではなく,パソコンを使った「コンピュータ診断」が主流である.パソコン上でインプラントの診断を行う場合,2つのタイプのソフトが利用されている.1つはCT画像内で距離を計測してインプラント埋入長さを想像する「ビューイングソフト」.もう1つは距離計測をすることなく,コンピュータ画面上にインプラントの形状を模倣した立体データを配置して診断する「インプラント・シミュレーションソフト」である.

    本報では直感的でわかりやすい「インプラント・シミュレーションソフト」の診断フローを,メーカーやソフトに依存しない3つのステップで言及する.ただし,CT撮影用テンプレートを作る判断基準や,診断ステップはすべて筆者の私見である.

  • 菅井 敏郎
    原稿種別: 特集Back to the Basics(臨床の疑問に答える)
    2018 年 31 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    インプラント治療は手術という観血処置を伴うため,従来の歯科治療の延長線上にある治療ではない.インプラント手術に関連するトラブルには,手術部位感染,神経損傷,上顎洞炎,上顎洞内インプラント迷入,創の裂開,治癒不全などがあるが,その原因には基本的な手術に関する術者の知識不足やスキル不足によるものが少なくない.

    手術で重要なことは感染防御である.手術部位感染を防ぐためには,清潔な手術環境を整え,正しい器具機材の管理法,扱い法,清潔な手術操作の知識と技術の習得が不可欠である.本稿では手術部位感染防止のための原則と習得すべき基本手術手技に関して,論文や文献をもとに現時点で一般的に推奨されている事項を解説する.

原著(基礎研究)
  • 関矢 泰樹, 遠藤 輝久, 伊藤 聖, 高橋 究理, 秋本 和宏, 伊藤 賢, 中村 正和, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    インプラント治療においてアバットメントが緩むことは,アバットメントとインプラント体の破折や骨吸収に影響する重要な因子であると考えられる.したがって,本研究はアバットメントをインプラント体に20Ncmで嵌合させた状態を緩みのない試験体とし,アバットメントの緩みは角度によって設定を行い,90°(1/4回転),180°(1/2回転),360°(1回転)とした.緩みを設定した各試験体は万能試験機にセットし,清涼菓子が破断するまでの荷重とインプラントカラー部に生じるひずみはひずみゲージを用いて測定し,アバットメントの緩みとインプラントカラー部のひずみの関係について検討を行った.また,アバットメントの緩みとインプラントの最大曲げ荷重およびたわみの関係についても検討を行った.

    その結果,以下の結論が得られた.各アバットメントの緩みと清涼菓子の破断荷重には有意差が認められず85.1±4.0Nであった.清涼菓子が破断するときの1/2回転と1回転緩ませた試験体のカラー部に生じるひずみは0.1%以上であった.この測定値は骨の吸収の危険性が示唆された.また,アバットメントが緩んだ状態の試験体のカラー部のひずみは20Ncmで嵌合した試験体の200Nから300Nの荷重負荷時のひずみと同様の値であった.緩みが1回転の試験体の最大曲げ荷重とたわみは緩みのない試験体と比較して約23%減少した.上部構造を装着後は定期的にアバットメントの緩みが生じていないかを精査することが必要であると考えられた.

  • 山村 卓生, 玄 太裕, 日下部 修介, 小竹 宏朋, 安藤 雅康, 堀田 正人
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    金属,セラミック,硬質レジン等の被着体の処理材を組み合わせた多目的接着システムが市販され,臨床に応用されている.しかし,その組成は複雑で,詳細は明らかではない.そこで,各種多目的接着システムの被着体の違いによるコンポジットレジンとの接着性,引張接着強さ試験,試験後の破壊形式の判定を行った.また,各被着体に紫外線照射することでコンポジットレジンとの接着強さの向上があるか,低圧水銀ランプ(185nm,254nm)とエキシマランプ(172nm)にて蒸留水に対する接触角と多目的接着システムの引張接着強さの検討を加えた.

    その結果,サンドブラスト処理後の各種被着体(12%金銀パラジウム合金,Clearfil AP-X,CEREC Blocs,ナノジルコニア)に対して,各種多目的接着システムは従来の各被着体ごとに塗布する処理材と同等以上の接着強さを示した.特に,多目的接着システムのユニバーサルプライマーは3種類の被着体(12%金銀パラジウム合金,Clearfil AP-X,CEREC Blocs)に対して,他の多目的接着システムや従来の方法よりも有意に高い接着強さを示した.また,すべての被着体は紫外線処理後,接触角は低下し,エキシマランプのほうがより親水性を高めた.さらに,ユニバーサルプライマーを用いて接着強さを検討した結果,紫外線未処理の試料と有意差はなかった.しかし,接着強さの信頼性をワイブル分析すると,12%金銀パラジウム合金,Clearfil AP-X,ナノジルコニアに対して接着強さのばらつきの幅が減少し,接着強さの減弱防止ができた.

  • 吉永 修, 加倉 加恵, 石原 貴美恵, 柳 束, 谷口 祐介, 城戸 寬史
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,荷重下のジルコニアインプラント周囲骨組織の反応を動物モデルで評価することである.

    φ3.0×15.5mmの1ピースタイプのスレッドタイプジルコニア製実験用インプラントを製作した.表面性状は機械加工タイプとレーザー加工タイプの2種類とした.2頭のビーグル犬の下顎両側臼歯を抜歯し,6カ月後に右側に機械加工タイプ3本,左側にレーザー加工タイプの実験用インプラントをそれぞれ3本埋入した.埋入直後に金属製保護床を装着し,3カ月間インプラント体に負荷を与えないようにした.

    埋入から3カ月後,1頭から無負荷モデルとして試料を採取した.別の1頭のジルコニアインプラント上に金属製の上部構造を装着した.また,対合歯に咬合プレートを装着し,インプラント上部構造と咬合接触を与えた.12カ月後,咬合負荷モデルとして試料を採取した.研磨標本で骨接触率(BIC)とインプラントのスレッド内の骨占有率(BA)を測定した.また,荷重前後のエックス線写真でインプラント辺縁骨を評価した.

    すべての組織標本でインプラント体表面と骨組織の直接接触が観察された.組織標本とエックス線写真において辺縁骨の吸収像はなかった.2種の表面性状の間にBICとBAに差は認められなかった.荷重後のBICとBAは荷重前と比較して,機械加工タイプの皮質骨部を除いて有意に高くなった.

    以上の結果から,ジルコニアはインプラント体材料として有用性が高いことが示唆された.

症例報告
  • 梅原 一浩, 小林 恒, 山崎 尚之, 夏堀 礼二, 田中 純一, 佐藤 雄大, 佐々木 智美, 木村 博人
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 31 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    若年者に対するインプラント治療の適応や埋入方法は,個々の成長と発育に左右されるため,慎重な診断と成長予測に基づいた治療計画が必須となる.今回,16歳女性の上顎前歯部にインプラント治療を行い,20年以上の長期に渡って機能的・審美的に満足な結果が得られたので報告する.

    本症例では,20年の間にインプラント上部構造と隣在する中切歯切端との間に約2.1mmの差が生じた.このような垂直的位置変化には,顎骨の成長,第三大臼歯の萌出,永久歯列の経年的変化など種々の要因が影響するものと思われた.確かに,成長が終了するのを待ってからインプラント治療を行う方が望ましいと思われるが,先天性欠損や外傷による少数歯欠損などの理由から若年者にインプラント治療を求められることもある.そのような場合は,各々の患者の成長曲線,骨年齢,第三大臼歯の萌出力などによる影響やセファログラムによる矯正的分析を考慮しなければならない.また,隣在歯の位置を確認した後,インプラント体を口蓋側寄りとし,深くなりすぎないよう慎重に埋入することも重要である.

調査・統計・資料
  • 田中 譲治, 水谷 紘, 古市 嘉秀, 笹谷 和伸, 若井 広明, 水口 稔之, 佐久間 栄, 星野 和正
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2018 年 31 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    超高齢社会を迎え,無歯顎患者や多数歯欠損の患者においては,少数のインプラントで高い効果のあるインプラントオーバーデンチャー(以下IOD)に関心が寄せられている.その中でも,取り外しが容易でメインテナンスのしやすい磁性アタッチメントが注目されてきている.しかし,磁性アタッチメントといっても多くの種類があり,性能も異なっており,磁性アタッチメントを探究するにはその性能を知ることは不可欠である.そこで国内外の磁性アタッチメント(7種類)を入手し,その基本性能を調べて比較検討した.

    その結果,吸引力において最小1.29N,最大7.68Nと大きく幅があり,体積においても最小8.6mm3,最大41.3mm3と大きく幅があった.単位体積あたりの吸引力では最小0.04,最大0.44と約10倍もの差が示された.磁性アタッチメントの磁気回路には開磁路構造と閉磁路構造があり,前者は後者に比べて吸引力が小さく,漏洩磁場は高い値を示した.耐食試験についてはSn蠟着している製品に腐食がみられたが,他は問題なかった.しかし,磁石をステンレス鋼などで覆わずに吸着面がNiメッキのみであったり,圧入だけの組立てを行っている磁性アタッチメントもあり,実際の使用に伴う物理的刺激により腐食が誘発されることが危惧された.これまでにバーやボールのアタッチメントとの比較研究が報告されているが,基本性能の劣る開磁路回路の磁性アタッチメントを用いていることが多いため,磁性アタッチメントの評価を落としていることが考えられる.閉磁路構造で耐久性も含め,基本性能の優れた磁性アタッチメントによる比較研究が待たれる.

  • 中島 和敏, 中島 明敏, 中島 薫, 小澤 重雄, 丸尾 勝一郎, 根岸 邦雄
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2018 年 31 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,臼歯部欠損に対し二ケイ酸リチウム単独冠を用いたインプラント補綴装置の長期予後を分析し,その成功率と臨床的有用性を評価することである.

    対象および方法:2008年6月から2014年3月までの間に,単独の歯科診療所にて臼歯部にインプラント治療を受けた患者173人(男55,女118,平均年齢57歳)に既製アバットメントを装着し,セメント固定した383本の二ケイ酸リチウム単独冠が分析の対象となった.5年後のインプラントおよび上部構造の累積残存率および,技術的合併症について後ろ向きに調査を行った.

    結果:使用したインプラントはストローマン社製インプラント289本,カムログ社製インプラント94本の合計383本であった.喪失したインプラントはなく,5年経過時のインプラントの累積残存率は100%であった.また,383本の単独冠のうち破折したものは7本で,5年経過時の累積残存率は97.2%であった.3本のクラウンに小さなチッピングが認められたが部分的な削合研磨で対応した.技術的合併症率は2.6%であった.技術的合併症率は小臼歯と大臼歯の間で統計的有意差を認めた.

    結論:臼歯部固定性インプラント支持補綴装置として使用した二ケイ酸リチウム単独冠は,5年間の追跡をとおして良好な長期予後と臨床的有用性が示唆された.

  • 田子内 道徹, 塩田 真, 今北 千春, 渡邉 武, 中田 秀美, 黒田 真司, 立川 敬子, 春日井 昇平
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2018 年 31 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    1995年の東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来の開設以来,新来患者の動向とその背景を明らかにすることを目的として,われわれは5年ごとに後ろ向き定点研究を行ってきた.1996年4月から2017年3月までの間5年ごとに,新来患者総数,性別,年齢分布,および来院理由を調査した.

    新来患者総数は,1996年度の275名から2011年度の1,643名に増加したが,2016年度は1,164名に減少した.男女比はどの年度もおよそ1:2だった.新来患者の年齢のピークは,1996年度の40~50歳代から2011年度の60歳代へと徐々に変化したが,2016年度は2011年度と同じ60歳代であった.来院理由の約80%は,インプラント治療希望であった.他院埋入インプラントの不調患者数は1996年度から2011年度にかけて増加したが,2016年度は2011年度とほぼ同数であった.

    更に,2001年度から2016年度の間のインプラント埋入手術件数は,インプラント治療希望の新来患者数に比例した.一方,その他インプラント関連外科手術件数は,年度ごとに増加した.2016年度における総手術件数は,2011年とほぼ同等だった.

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