日本口腔インプラント学会誌
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特集 海外の基礎研究はインプラント治療をどう変えたか?:From Bench to Clinic
オッセオインテグレーションの獲得に関わる骨代謝とコラーゲン架橋
加来 賢井田 貴子長澤 麻沙子魚島 勝美
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2019 年 32 巻 2 号 p. 108-115

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抄録

デンタルインプラントにおける術前検査と埋入プロトコルが確立されつつある現在では,その長期予後をいかにして予測し,これを維持するかが新たな課題となっている.長らく歯科界でインプラント適用時の判断基準として使われてきた概念,すなわちインプラント埋入部位の骨量と骨密度を基にした分類は,インプラントの初期固定と骨の力学的支持能力を評価する際に効果的であることは明白である.しかしながら,整形外科領域で診断根拠として用いられる“骨質”は,骨の機械的強度に影響を及ぼす因子の中でも骨密度以外の要素を指し,時に歯科で使われる“骨質”とは全く異なる概念である.整形外科領域で使われる“骨質”の代表的な要素の一つであるコラーゲン架橋は,コラーゲン生合成の過程において細胞内外で生じる一連の翻訳後修飾の結果として形成される分子間架橋であり,その量や構成比が組織の機械的特性に寄与していることが知られている.また,近年の研究から,組織中のコラーゲン架橋は細胞活性を制御することが報告されており,骨組織中のコラーゲン架橋は組織の機械的強度に影響を及ぼすだけでなく,局所的な骨代謝回転を制御する因子としても機能していると考えられる.本総説では骨質の一要素でもあるコラーゲン架橋の新たな機能と,そのインプラント治療における臨床的意義および将来的な展望について紹介する.

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© 2019 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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