日本口腔インプラント学会誌
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原著(臨床研究)
カルシウム拮抗薬およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬服用患者のインプラント周囲組織に関する臨床的評価
関 啓介西澤 智香子大野 立人紙本 篤萩原 芳幸
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2019 年 32 巻 2 号 p. 140-147

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抄録

目的:本邦における高血圧症の患者は約4,300万人と推定され,インプラント治療患者のなかでも高い有病率を示すと考えられるものの,降圧剤服用とインプラント治療の関連性は不明な点が多い.このため,種々の降圧剤の服用がインプラント周囲組織の臨床的パラメータに与える影響を臨床的に検討した.材料および方法:2016年11月から2018年4月までの間,メインテナンスのため来院した患者を対象とし,カルシウム拮抗薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)による治療を受けているものを降圧剤服用群(Antihypertensive Medications:AH群),全身疾患がなくいずれの服薬治療をうけていないものを健康群(Healthy:H群)とした.喫煙者と中等度以上の歯周炎の既往があるものは除外し,上部構造装着時から6カ月以上経過したものを調査対象とした.評価項目は,プロービング深さ(PPD),プロービング時の出血(BoP),骨吸収量(MBL)を調査し統計学的に検討を行った.結果:対象は患者35名(男性10名,女性25名),インプラントは総計70本であった(H群:25名,46本,AH群:10名,24本).全体の平均メインテナンス期間は5年6カ月,インプラント周囲炎の発症率は5.7%であった.二群間の比較では,PPDとMBLがAH群で有意に大きかった.AH群内では,BoPMBLに正の相関がみられた.結論:中期的なメインテナンス治療では,カルシウム拮抗薬やARBを服用する患者のプロービングデプスや経時的な骨吸収量が増加している可能性が示唆された.

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© 2019 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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