日本口腔インプラント学会誌
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症例報告
下顎半側区域切除後の再建プレート上の皮弁と残存顎堤で支持されたインプラントオーバーデンチャー12年経過症例
荒井 良明星名 秀行高嶋 真樹子河村 篤志山﨑 裕太髙木 律男魚島 勝美
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2019 年 32 巻 3 号 p. 230-235

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抄録

腫瘍治療のための下顎骨区域切除後は,腓骨や腸骨などの自家骨を用いて再建されることが多い.一方,欠損の大きさや病態,年齢等によりプレートのみで再建せざるを得ない患者が少なからず存在する.そのような患者の場合,プレート上の皮弁で可撤性有床義歯を支持させることは非常に困難である.今回,下顎片側切除後にプレートのみで再建し,インプラントオーバーデンチャー(IOD)で長期間良好な口腔機能を維持できた無歯顎症例を経験したので報告する.

患者は74歳の女性で,下顎歯肉癌の診断にて右側下顎半側切除後D-P皮弁による再建術を受けた.その後マラソンが趣味であることから腸骨や腓骨採取の同意を得られず,プレートのみで二次再建をした.上下顎総義歯によってきわめて柔らかい食物のみ摂食可能となったが,断端部の床下粘膜に常時疼痛を訴えた.そこで残存顎堤の断端部にインプラントを埋入し,再建プレート上の皮弁とインプラントを埋入した残存顎堤で支持した下顎IODとしたところ,疼痛の訴えはなくなり,食べられる食品も増加した.再建プレート上の皮弁に一度も潰瘍が生じることなく,良好な咀嚼機能を12年間維持できた.インプラント周囲の粘膜の異常所見やパノラマエックス線写真による骨吸収は認めず,患者の口腔関連QOLは高く維持されている.

下顎再建プレート上の義歯にインプラントを応用することで,12年間の長期にわたり良好な口腔機能を維持することができた.

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© 2019 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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