2020 年 33 巻 2 号 p. 122-133
インプラント治療の最大の目的と役割は,残存歯の保護および機能の回復であり,安全で確実にインプラントを埋入するための欠損部位に対する局所の診査,診断は重要である.しかしながら,インプラント治療は歯科治療における単なるオプションの一つであり,インプラントを用いたとしても歯科治療そのものの原則は変わらない.つまり治療計画のなかにインプラントを取り入れるか,取り入れないかの判断は,根本的な歯科治療における診査,診断が前提になければならないと考えている.すなわち,インプラント治療の診査,診断において最も重要なことは,現状にいたった原因を探ることであり,骨格,歯列,支持組織,歯の順序で,どの項目に問題があるかを把握するとともに,欠損がなかった時期から現在の咬合状態までの時間軸のなかでの変化を読み取り,患者の本来もっている抵抗力および将来に起こりえる変化を予測することである.現状にいたった原因の把握をしないまま欠損があるからといって安易にインプラントを埋入することは,たとえその処置がエビデンスどおりの高度な処置であったとしても予後に不安を残す結果になるとともに,問題をより複雑にさせると考えている.
本稿では,骨格,歯列,支持組織,歯の項目のなかで,骨格および歯列に問題のある症例に対してどのように診断,評価し,インプラントの治療計画を立案したかを提示し,これまでに得られた知見を紹介したい.