2020 年 33 巻 2 号 p. 134-141
近年,重度歯周炎が原因で歯を失った患者にインプラント治療を行う機会も多くなり,患者のQOLの向上に貢献している.重度歯周炎患者にインプラント治療を行った場合,最も懸念される問題は,術後のインプラント周囲炎の発症である.歯周炎の既往のある患者では,既往がない患者と比較して,術後長期に経過するとインプラント周囲炎の発症率が高くなることが報告され,歯周炎の既往は喫煙と同様にインプラント周囲炎のリスクファクターと考えられている.
そこで筆者らは,重度歯周炎患者にインプラント治療を行う場合,潜在的ないくつかの重度歯周炎患者特有の問題を把握する必要があると考えている.1)残存天然歯に深い歯周ポケットが存在する可能性がある.2)欠損部歯槽堤が高度に吸収している可能性がある.3)支持骨を喪失しているため残存歯が動揺している場合がある.4)歯周炎の進行に伴い病的な歯の移動が存在し,咬合の不調和が存在することがある.5)既存の不正咬合が誘因となって歯周炎が進行し,歯を喪失していることがある.
これらの問題は,術後の歯周組織やインプラント周囲組織の清掃性を悪化させ,かつ天然歯やインプラント上部構造への外傷力となりうる.すなわち,術後の長期的な安定を得るためには,的確な診断の下,徹底した歯周治療やインプラント周囲の硬・軟組織の再建ならびに安定した咬合関係が得られるような包括的な治療計画が望まれる.